週刊人工知能ニュース 2018年5月23日から27日

 

5月22日から27日

 

論文、ネットで事前公開、グーグルやNECなど、「学術誌より先」広がる、独創性素早く確保。

大学や民間企業の研究者が通常は学術誌に掲載する研究論文を出版前にもかかわらず、インターネット上で公開する動きが相次いでいる。
 2017年12月、ネット上に公開された1つの論文が話題を呼んでいる。米グーグルの持ち株会社アルファベット傘下の英ディープマインドの研究者らが公開した論文。プロ棋士の手を学ばず人間の世界トップ棋士より強い囲碁用AI「アルファ碁ゼロ」を、将棋やチェスにも応用した「アルファゼロ」に関する研究だ。
 論文は19ページで、ネット上で誰でも論文を投稿できる「プレプリントサーバー」と呼ばれる専用システムだけに投稿された。数時間の自己対戦で将棋やチェスの世界最強ソフトを超える強さを獲得したと説明した。
 大学や民間企業の研究者が通常は学術誌に掲載する研究論文を出版前にもかかわらず、インターネット上で公開する動きが相次いでいる。学術誌に投稿せずネットだけに公開するケースもある。人工知能(AI)やIT(情報技術)など技術革新が加速し、素早い研究成果の公開で独自性(オリジナリティー)を確保するほか、共同研究者を募るのが狙い。信ぴょう性の乏しい研究が公表される恐れもあるものの、学術誌による公開で真理を探究してきた科学研究の流れが変わりそうだ。
 2017年12月、ネット上に公開された1つの論文が話題を呼んでいる。米グーグルの持ち株会社アルファベット傘下の英ディープマインドの研究者らが公開した論文。プロ棋士の手を学ばず人間の世界トップ棋士より強い囲碁用AI「アルファ碁ゼロ」を、将棋やチェスにも応用した「アルファゼロ」に関する研究だ。
 論文は19ページで、ネット上で誰でも論文を投稿できる「プレプリントサーバー」と呼ばれる専用システムだけに投稿された。数時間の自己対戦で将棋やチェスの世界最強ソフトを超える強さを獲得したと説明した。
 この論文が、コンピューター囲碁の研究者やプロ棋士が参加して1月に電気通信大学で開いた研究会で議論された。研究会を主催した電通大伊藤毅助教は論文には十分な情報がなく成果をうのみにできないものの「囲碁の手法が将棋やチェスといった思考ゲームにも広く応用できる可能性を示したことは意味がある」と評価。学術的なインパクトは大きく、情報公開によって研究の進展が加速するからだ。
 NECもITなどの研究成果をプレプリントサーバーへ積極的に公開。幅広い企業や研究者に成果を知ってもらうためだ。同社の西原基夫執行役員は「先端技術を早期に公開し、関心を示した外部企業と連携する重要性が増している」と説明する。
 ヤフーも周囲の研究者や企業からの反応を次の研究に生かすことを優先。AIなど旬の研究テーマなどで、早期に成果を公開した方がいいと判断した約1割の論文は学術誌より先行し同サーバーに掲載する。NTTも研究分野における自社の存在感を高めるため、一部の論文を同サーバー上で公開している。
 大学でも動きが進む。東京大学京都大学理化学研究所などの研究者がプレプリントサーバーを利用する。
 AIや数学、物理などの論文を掲載する米コーネル大学図書館運営のサーバー「arXiv(アーカイブ)」に17年の1年間で投稿された論文数は12万件で、07年の2・2倍になった。

 

ビズリーチ、AI人材採用へインフラ

人材サービスのビズリーチ(東京・渋谷)は、エンジニアやデザイナーらIT関連の人材採用拡大に向け、情報インフラの投資に乗り出す。総額約1億円を投じ業務用の高性能パソコンを約140台導入。人工知能(AI)で最適な求人先を探すなど高度な情報処理ができる体制を整え、現在300人強の技術者を1年で3割以上増やす計画だ。
 同社は全社員の3割がエンジニアや、利用者の使いやすさ向上などを担当するデザイナー。人材サービスにAIなど最新技術を使った「HRテック」に力を入れ、香港など海外での採用も進めており、100人増やす。

 

AI・IoT・フィンテック、都、海外企業の発表会。

 東京都は海外企業を都内に呼び込むプログラムを実施する。人工知能(AI)やあらゆるモノがネットにつながる「IoT」のスタートアップを呼び、ビジネスプランの作成や発表をしてもらう。フィンテック関連企業による企画も同時に実施する。日本企業と連携させ、東京でビジネスすることのメリットを訴える。
 プログラムはIT(情報技術)企業による「テックビジネスキャンプ東京」と、「フィンテックビジネスキャンプ東京」の2本。それぞれ8月に約10社の海外企業を選ぶ。10月からビジネスプランを作成してもらい、11月下旬に発表する。
 プランの作成では国内企業や金融機関と組むようにする。発表会には投資家らを招き、資金調達にも直結させる。国際競争力の向上や、都が目指している「国際金融都市」につなげる。

 


自治体業務、AIが担う、都主税局、チャットで応答、港区、議事録の作成支援。

 首都圏の自治体が住民サービスや庁内の業務で、人工知能(AI)を導入する例が相次いでいる。AIがごみの分別や税金を巡る住民からの問い合わせに自動対応するほか、従来は人手で取り組んでいる文章の処理作業を代替する。職員の負担軽減に加え、サービスの質の向上につなげる。技術を提供する民間企業の側にとっては、AIの学習機能を高める機会となる。
 横浜市は4月からNTTドコモと組み、AIを活用したごみの分別案内を本格的に始めた。「イーオのごみ分別案内」というコーナーを市のホームページ内に設け、チャット形式で市民からの問い合わせに答える。2万種類ものごみの捨て方に対応できるという。
 市は2017年3月から、市民がチャットを試せる実証実験を実施。期間中の利用件数は210万件を超え、担当者は「かなり手応えがあった」と話す。
 自動車税に関する問い合わせでAIによるチャットを始めたのは東京都主税局。「自動車税について知りたい」「どこで払えばいいのか」といった文字で入力した質問に、AIが内容を分析し適切に回答する。
 自治体は会議が多い。きちんとした議事録の作成の重要性は公文書管理や情報公開の面から高まっている。東京都港区はAIの音声認識や学習の技術を活用した議事録の自動作成支援ツールを5月中に導入する。
 AIの学習機能を使えば、区が使っている独自の用語や、地名など固有名詞にも対応できるようになるという。従来は職員や外部の委託先が手作業で取り組んでいた。職員の負担軽減と委託経費の削減を目指す。
 認可保育所の入所選考という膨大なデータ処理をAIができないか模索する動きもある。
 さいたま市は17年、富士通などの実験に協力した。申請者約8000人分を匿名化したデータから、AIが親の勤務状況などの条件を点数化し、数秒で最適な組み合わせを割り出した。例年1月、約30人の職員が手作業で入所先の割り当て作業をしている。17年と18年は約50時間かかったという。
 同市は職員の時短に加え、申込者にも早く結果を伝えられると評価する。ただ、職員が手作業の過程で各世帯の状況を把握することが、保留扱いとなった子どもへの対応にも役立つ面があるとしている。「AIの利点はあるが、住民サービスの質の面を総合的に判断して、今後導入について検討したい」(保育課)と強調する。

 


部下との面談、AIが分析、村田製など、商用化めざす。

 村田製作所は21日、KDDIと共同で人工知能(AI)を使って、管理職と部下の面談の質を向上させる実証実験を5月下旬から始めると発表した。会議室にセンサーを設置し、管理職と部下の発言の回数や長さ、声のトーン、テンポなどのデータを蓄積する。
 AIを通じて対話がどれだけできているかといった分析をし、管理者に結果を伝えて役立てる。実験をもとに商用化を目指す。
 村田製が開発したAI「NAONA(ナオナ)」をベースに、KDDIグループのクラウドサービスなどを組み合わせる。
 まず、コールセンターのベルシステム24(東京・中央)と、KDDIエボルバ(東京・新宿)で実験を始める。
 村田製は部品事業が主力だが、AIを新規事業として育成している。NAONAはすでに保育園の児童の状態監視でも実証実験した。
 新しいサービスは2018年内の実用化を目指している。

 

無人コンビニ即出店、商圏50メートル、オフィスの席チカ、アマゾンgoと別の道

流通業界が人手不足と労務コストの上昇に直面する中、スタートアップの600(ろっぴゃく、東京・渋谷)が無人のミニ・コンビニエンスストア事業を立ち上げた。米アマゾン・ドット・コムの「amazon go」などとは方向性が異なり、機能を絞り込んだ軽装備システムで店員ゼロを実現しようとする試みだ。

 

素材開発へAI人材育成、東レなど産学官連携、5年で1500人、来年度開講。

 東レ昭和電工など素材大手は、東京大学などと組みビッグデータを新材料の開発に生かす人材の育成事業を始める。人工知能(AI)を素材開発に活用する、次世代の開発手法を習得した即戦力を5年間で1500人育てる計画。競合の海外の素材大手や、国内の異業種とのデジタル人材の獲得競争に備え、産学官の連携を強化する。
 このほど東レなど2社のほか、積水化学富士フイルム三井化学と業界団体、東大などで構成するコンソーシアム(共同体)を立ち上げた。
 人材育成の対象になるのは、AIを活用し開発期間を大幅に短縮できる「マテリアルズ・インフォマティクス(MI)」と呼ばれる分野。2018年度中にあらゆるモノがネットにつながる「IoT」の通信技術や、実際の材料を使ったデータ分析手法などの講座のカリキュラムを作成する。

 


IoT産業育成、長崎一体で、84社が協議会、県も連携支援、企業間でマッチング。

 長崎県でロボットやあらゆるモノがネットにつながる「IoT」産業を育成する動きが活発になってきた。造船など既存事業で蓄積してきた技術を新分野に応用できる企業がすでに80社以上ある特性を生かし協議会を設立、県や長崎大学も支援する。地域活性化につなげる考えだ。
ロボやAIも
 「長崎県次世代情報産業クラスター協議会」では、ロボットとIoTのほか機器などへの組み込みシステムや人工知能(AI)の産業化に取り組む。今後は地元企業への普及啓発のセミナーや長崎大学と連携した専門講座などを実施。人材育成も支援する。高度な技術を持った企業と活用したい企業をマッチングさせる事業も手掛ける。
 事業化に向けてグループを築いた地場企業に対して専門アドバイザーなどの派遣や外部資金の獲得支援も実施する。県も協議会を全面的にサポートする方針で、ロボットやIoTのシステム開発や実証試験を実施する際の経費を補助する制度も始める。
 長崎県内には関連企業が既に80社以上あるという。システムファイブ(長崎市)はIoT関連事業に進出し、大新技研(佐世保市)はロボット関連や電子カルテ事業を手掛けている。県では「県内にも既に技術を有する企業があり、連携などを支援することで、地域産業の核に育成していく」(産業労働部)方針だ。
会長「産学官で」
 協議会は84社が参加し、会員は増やしていく方針。会長にはNDKCOM(長崎市)の中野一英社長が就き、「地域を担う産業にするため精いっぱいやっていく。産学官を挙げて取り組みたい」と語った。

 

好みの旅行、AIが提案、KNT―CT、近ツーなど傘下の会員基盤統合、店舗活用、ネット販売本腰。

 旅行大手のKNT―CTホールディングスが旅行商品のインターネット販売に本腰を入れる。AI(人工知能)が会員の好みに合った旅行商品を提案するシステムを開発するほか、2020年には傘下の近畿日本ツーリストクラブツーリズムのサイトや会員基盤も統合する。ネット商品の店頭での説明にも力を入れるなど、オンラインと店舗の両輪で需要取り込みを目指す。
 今後3年間で94億円のIT(情報技術)投資を計画する。ネット経由の旅行商品は価格競争に陥っているが、「価格のみで勝負はしない」(KNT―CTホールディングスの丸山隆司社長)。ネット販売でも添乗員が同行するツアーやテーマごとに各地をめぐる旅など、企画旅行を品ぞろえの目玉にする。
 顧客の嗜好に応じた旅行を企画することで、価格競争を避けながら、独自性を打ち出していく。IT投資は今後3年で94億円を計画し、AIによる会員の好みに応じた商品提案システムなどを開発していく。
 傘下の近畿日本ツーリストクラブツーリズムのサイトも20年に統合することで、安定した顧客基盤を活用してネット販売を伸ばしていく。2社合わせた会員数も現在の1000万人弱から1200万人に増やす方針。旅行の取扱高に占めるネット売り上げの比率を17年度の27・5%から、21年度に50%に引き上げる。
 全国に150ある店舗は維持しながら、「店頭でもネット商品を販売する」(丸山社長)。自社のスタッフが商品をより詳しく説明するなどネットだけでは伝わりにくい商品の魅力を伝えることで、ネット専業との違いを明確にする。

 

マイクロソフト、障害ある人助けるAI研究助成。

マイクロソフトは障害のある人の困難を取り除くために人工知能(AI)を使う活動に2500万ドル(約27億円)を助成する5年間のプログラム「アクセシビリティのためのAI」を始める。研究者や非政府組織(NGO)に助成をしたり開発コンテストを開いたりする。例えば、音声やジェスチャーの認識AIを用いて、手足に障害がある人や難聴の人でも不自由を感じずに暮らせる技術やサービスの研究開発を促す。助成プログラムで得た成果について、将来は自社のクラウドサービスに組み込んで提供する考えだ。

 

米IT投資拡大のイスラエル、ハイテク人材育成急げ、女性などにプログラミング教育、10年で倍の50万人めざす。

1948年の建国から70年を迎え、先端技術を次々に生み出す「スタートアップ国家」として注目を浴びるイスラエルがハイテク分野の人材不足に直面している。米IT(情報技術)大手からの投資流入に人材供給が追いつかない。政府は今後10年でハイテク分野の労働者数を現在の27万人から50万人に増やす計画を掲げる。女性やアラブ系、ユダヤ教超正統派の人々の労働市場への取り込みがカギとなりそうだ。

 

富士通のサイバー防衛――イスラエル発2社と提携、軍事技術の民間移転に力

 富士通がサイバー防衛分野の取り組みを強化している。このほどイスラエル発祥の2社と提携した。イスラエルは軍事技術に端を発したIT(情報技術)やサイバー分野に精通した人材が多く、相次ぎ有望なスタートアップ企業が生まれている。世界中で国や企業へのサイバー攻撃が増えるなか、自社技術を補完できる他社の知見の取り込みを急ぐ。
 富士通が提携するのは「サイバーリーズン」と「イントサイツ サイバー インテリジェンス」の2社。ともに現在の本社は米国だが、もともとはイスラエル発祥の企業。イスラエルは軍事技術の民間移転と起業支援に力を入れており、サイバー分野やAI(人工知能)、自動運転といった先端分野で近年、有力企業を多く輩出している。富士通は提携により関連サービスの領域を広げ、2019年度に世界でのサイバー防衛関連製品・サービスの売上高3000億円をめざす。
 サイバーリーズンは攻撃を受けた端末の作動や攻撃者の動きをAIで分析して、未然の攻撃検知につなげるサービスを手掛ける。このサービスと富士通のエンジニアによる24時間サポートを組み合わせて顧客企業に提案する。
 イントサイツとは一般人がアクセス困難なウェブ上の領域での攻撃情報を収集するサービスで協業する。イントサイツが集めたデータから、富士通が顧客企業に応じた脅威情報を抽出・分析する。9月ごろまでのサービス開始を検討する。

 


物流ロボット――東芝ロボティクス・画像セキュリティ事業責任者柚井英人氏、24時間自動荷下ろし

 東芝は物流倉庫で荷物の荷下ろし作業を自動化するロボットを開発した。台車に積まれた大きさが異なる箱をセンサーで検知し、1個ずつ吸盤で取り出してコンベヤーに移す。郵便物を仕分けする際に宛先を読み取る画像認識技術を応用し、荷物の形や隙間を区別する。どの荷物を下ろすのか、事前に登録する必要がないため使いやすい。30キログラム以下の荷物なら毎分約7箱荷下ろしできる。4月に発売し、飲料水や食品の在庫を置いているスーパーからの受注を目指している。ロボティクス・画像セキュリティ事業責任者の柚井英人氏に聞いた。
 ――物流ロボットを開発したきっかけは。
 「人手不足で物流倉庫では荷下ろしする従業員が確保できずに悩んでいる。2リットル入りペットボトル飲料6本を詰めた段ボール箱の重量は12キロになる。山積みになった重い段ボール箱を腰を折り曲げて荷下ろしするのは重労働だ。荷下ろし作業のスピードも時間がたつと疲れてきて遅くなる。だが、ロボットであれば一定の速度で24時間作業ができる」
 「東芝は郵便物の宛先情報を読み取って仕分けする画像認識技術を持っているが、郵便物市場は縮小している。既存技術の新たな使い道として、物流現場に応用したいという議論を数年前からしていた」

 

アマゾン1000人新規採用、事業拡大に対応、都内に新オフィス。

 アマゾンジャパン(東京・目黒)は22日、国内で正社員を1000人新規採用すると発表した。東京で事務職と技術職を採用し、2割増の7000人規模にする。また都内に新オフィスを設けるとも発表した。同社は人工知能(AI)スピーカーの販売など事業拡大を活発化させている。人材とオフィスの両面で事業の拡大に対応できる体制を整える。
 来年までに1000人の追加採用を目標とする。新規採用はマーケティングや財務などのコーポレート職、および機械学習クラウドコンピューティングなどの技術職を対象とする。
 採用と併せ、新オフィスをJR目黒駅近くに設ける。AIスピーカーやクラウドサービスのアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)関連の部署が入る予定。延べ床面積は約2万平方メートルで、今夏にも開設する。既存のオフィス(約3万平方メートル)も引き続き稼働させて「日本での事業拡大と顧客へのサービス提供能力の強化に努める」(同社)。

 

日立系、AI使い計算、食卓写真1枚で1食分栄養管理。

 情報通信システム開発の日立ソリューションズ・クリエイト(東京・品川)は人工知能(AI)を使い、食卓に並んだ料理の栄養成分を一括で計算するシステムを開発した。複数の品目を1枚の写真におさめれば、塩分やビタミンなどの栄養成分の量を割り出す。手軽に栄養管理ができるシステムとして、企業や病院など向けに2018年度中の製品化を目指す。
 AIに「ご飯」や「味噌汁」など約40品目と、エネルギーやたんぱく質、ビタミンなど約50種類の栄養成分を品目別に覚えさせた。料理をカメラで撮影すれば、AIが画像中の品目が何かを記憶済みのデータと照合して判断し、栄養成分ごとの合計値を出す。
 画像から料理の品目を見分けるシステムはこれまでもあったが、1枚の写真で複数の品目を一度に認識できるのは珍しいという。1食分を1枚だけで計算できるので、栄養管理が手軽になる。製品化の段階では判別できる品目を約600種類に増やす。食べた分量を認識する技術も開発する。
 システムは、自宅で撮影した料理の画像を管理栄養士やスポーツジムのトレーナーに送り、アドバイスをもらうといった用途を想定している。

 

デジタル変革担う40代技術者(日経BP専門誌から)

 企業における40代のIT技術者の役割が大きく変わりつつある。これまでは「管理業務を担える人材」として期待されていたが、デジタル変革の担い手として大きな注目が集まっている。
 「40代のIT技術者は得意な専門分野を持ち、それを軸にほかの分野のスキルも身に付けている。年代別に見て、総合的な能力は最も高い」。ネットワーク構築大手のネットワンシステムズで人事部門を統括する荒井透取締役常務執行役員経営企画本部長は断言する。40代はスキル、経験が充実して、技術者として最も脂が乗っている。
 部署やプロジェクトの中核として活躍する40代の技術者だが、個人を取り巻く環境は不安定だ。
 年金支給年齢の引き上げや定年延長により、20年以上は仕事を続けなければならない。同世代やすぐ上の世代が多く、出世が難しい。スペシャリストとしての生き残りを図るには、次々と出てくる新技術のキャッチアップが求められる。自身の将来に一切の不安がない40代技術者はまずいないだろう。
 少し前まで、企業が40代技術者に期待する役割は明確だった。「マネジメント(管理)業務を担える人材」だ。会社で長く生き残るには、管理職として出世していくことが唯一最善の策だった。
 ただ、出世コースを歩むのは一握り。厚生労働省の賃金構造基本統計調査によると、情報通信業における全正社員に占める管理職(課長以上)の比率は2割に満たない。40代で課長に上がれた技術者でも、部長、役員と上がっていけるのはごく少数だ。
 では、管理職になれない技術者は無価値なのか。かつて、そうした技術者がリストラのターゲットにされた時代があった。ただ、最近は会社側も非管理職への扱いを変えつつある。現場でデジタルビジネスを創出する役割を期待するようになっている。
 クラウドやデータ分析、人工知能といった新技術に詳しい「技術のスペシャリスト」や、デザイン思考や事業創出に精通して事業化を推進する「デジタルビジネスのリード役」といった役割である。
 富士通はまさにこうした役割として、2017年5月に「デジタルイノベーター」という新しい職種を定義した。富士通の山本幸史グローバルサービスインテグレーション部門ビジネスマネジメント本部人材開発部長は「経験を積んだ40代技術者には、管理職でなくても価値を生み出せる人材がたくさんいる」と説明する。
 背景には、ITを取り巻く環境が激変しているという事情がある。ユーザー企業は基幹系を中心とした業務効率化の「守りのIT」から、ビジネス変革を狙う「攻めのIT」へと投資の対象をシフトさせている。システムインテグレーション(SI)ベンダーの基幹系を中心としたSIビジネスは曲がり角を迎えており、攻めのIT投資を受け止める新規ビジネスの創出が経営課題になっている。
 デジタルビジネスの現場で最も期待されているのが、実は40代技術者だ。富士通でデジタルイノベーターを率いる半田智子デジタルフロント事業本部デジタルイノベーター推進統括部統括部長は「20代や50代もいるが主力は40代。40代の非管理職がデジタルイノベーターの約半分を占める」という。
 「デジタルビジネスは変化が激しく、全てを網羅した研修メニューの用意は難しい」(富士通の山本部長)。会社はスキル獲得を目指す技術者の支援はするが、何を学べばいいのかのレールまでは用意できない。会社の研修に頼らず、自己学習をするという姿勢が求められる。

 


消費行動理解するAI、楽天、潜在層開拓に活用。

 楽天ビッグデータを分析し消費行動を理解するAI(人工知能)「楽天アイリス」を開発した。楽天アイリスを使えば、導入した企業は購入の可能性のあるユーザーを選び出すことができる。広告配信などをより効率的に実施できるという。
 楽天技術研究所(東京・世田谷)、楽天のデータサイエンス部などが共同で開発した。購買の傾向や価格、ユーザーの属性など約920項目を分析し点数化する。購買実績のないユーザーのうち、購買したことのある人と似た特性をもつユーザーを選び出す。
 新規顧客の開拓に悩むメーカーなどが、まだ購入していないが「欲しい」と考えている層へ、効率良く広告を打つことができる。今後、楽天アイリスの分析やマーケティングの機能を拡充し、利便性を高める。
 楽天アイリスを使った広告配信サービスの提供も始めた。ネットのサイトや交流サイト(SNS)に表示したりメールを送ったりするオンライン広告だけでなく、ダイレクトメールの郵送や商品サンプルの配布といったリアルでのマーケティング活動にも使えるという。

 

人材配置、AIが助言、電通国際情報、社員の離職防ぐ新システム。

 電通国際情報サービスは23日、人工知能(AI)を使って、企業の人材配置を支援するシステムを開発したと発表した。従業員の経歴や資格などの人事データを分析し、従業員が能力を発揮できる異動先を助言する。これまで人事担当者の経験や勘に頼っていた人材の登用や配置、育成などの判断を客観的なデータをもとにできるようにする。
 新システム「タレントアナライズ」は同社が販売する人事情報管理システムの新機能として、9月に提供を始める。まず、各部署に所属する従業員の経歴や成績などを分析し、部門ごとに能力を発揮している人材の傾向を推測。異動対象者の中から最適な人材をマッチングさせる。
 複数の職種を経験させるジョブローテーションを効果的に実施することもできるという。新入社員が入社時に受ける適性検査の結果と、職場に配属後の能力の変化などを分析。どこの部署に配属させると成長が見込めるかを推定する。
 健康診断や家庭の状況などのデータを追加することもできる。子育てや介護など個々の従業員の事情に配慮した人事配置を指南し、優秀な社員の離職防止につなげる。
 利用料金は企業規模によるが、従業員2000人規模の会社では初期費用込みで年1500万~2000万円前後となる見通し。3年で150社程度の導入を見込む。

 

グーグル、家電にも「頭脳」、IoT向けOS公開。

 米グーグルがスマートフォンスマホ)で成功した事業モデルを幅広い製品群に展開し始めた。同社の人工知能(AI)を簡単に搭載できるメーカー向けソフトウエアをこのほど公開。機器の試作を容易にするツールも発売した。メーカーにとっては便利な半面、付加価値を奪われる恐れがある。グーグルは製造業のあり方を揺さぶる変革を、静かにしかけている。
 グーグルが8日に発表した画面付きのAIスピーカー。音声認識が注目を集めたが、本当の目玉は製品に組み込まれた「アンドロイド・シングス」という基本ソフト(OS)だ。あらゆるモノがネットにつながる「IoT」のOSで、AIスピーカーと電灯や空調などの接続を制御する。
 グーグルが提供するのはあくまでもOSなのでハードはどこが何を作ってもいい。IoTはメーカーが違うと互換性が無い場合があるが、その問題を解消した。同事業を担当するベンカト・ラパカ氏は「あらゆるモノにとってのパスポートのようなもの」と形容する。
 もうひとつ普及に向けた秘策がある。試作品づくりのハードルを下げたことだ。グーグルは米クアルコムの高性能半導体やメモリー、カメラなどをひとつにまとめた開発者向けのツールも発売し、アイデアを形にしやすくした。
 実はグーグルの画面付きスピーカーも内部の技術者がレゴブロックや外販のスピーカーを使い2カ月で試作品を作りあげたという。そこから提携メーカーと協議しわずか約1年で製品化にこぎつけた。試作から製品化への期間短縮はメーカーにとって強みとなり得る。
 グーグルの思惑通りアンドロイド・シングスは普及するか。同社の音声認識は用途によってはスムーズに人と会話できる水準。画像認識も精度を上げた。AIを使いたいメーカーには魅力的だ。
 一方、AIという製品の「頭脳」をグーグルに押さえられれば、従来型のものづくり企業には脅威だ。携帯電話の競争環境を変えたスマホ向けOS「アンドロイド」同様に新OSは変革を先導するのか。グーグル経済圏はじわりと広がっている。

 


EUデータ新規制、厳格ルールに戸惑い、あす施行、駆け込み対応。

 欧州連合(EU)が25日施行する個人データ保護ルールの厳格な内容に多くの企業が戸惑っている。EU地域に限定した問題であると誤解し、対応すべきだと気付いたときには想定を超える細かなルールだったという場合が多い。情報管理体制が整っても監視を続けることが不可欠で、対策に追われそうだ。(1面参照)
 「一般データ保護規則(GDPR)に基づき、登録している内容を再確認してほしい」。東京都在住の40歳代の会社員に、欧州のビジネススクールから5月に入ってこんなメールが届いた。
 米フェイスブックや米グーグルなどからも「プライバシー・ポリシー」の更新を連絡するメールが次々と送られてくる。この会社員は「幸い数社の対応で済んだが1社当たりの説明文が長く、返信などの手間を考えると煩わしかった」と話す。
 25日のGDPR施行直前にもかかわらず、消費者にこうしたメールが相次いで届いている。
 こうした駆け込みの対応は日本企業も同じのようだ。日本経済新聞社の主要企業へのアンケートでは、25日時点で取るべき対策を完了している企業は2割にとどまる。今回の調査は5月中旬から23日にかけて実施し、101社の回答を得た。
 大規模な情報流出が起きたり、個人や社員が不十分な対応を告発したりすれば、EUが調査に入る可能性はある。
 ただ、インターネットイニシアティブの小川晋平ビジネスリスクコンサルティング本部長は「どこまで対応しようとしているかきちんと説明できれば、いきなり多額の制裁金を科せられる可能性は低い」とみる。「従来の欧州の法律では施行後すぐの制裁が少なかった」(セキュリティー会社)との経緯などを踏まえた判断だ。
 多くの企業が最低限の対応で25日を迎える。EUから制裁されるとしても、減免措置が受けられると期待している。GDPR上では最低限の対応が何かについて細かく明記されているわけでなく、企業は探りながらの対応だ。
 それでも、流出問題の大きさなどによっては制裁を回避できるとは言い切れない。専門家は「できる限り早く体制を整備すべき」と口をそろえている。
 日本企業の戸惑いは大きい。ある大手メーカートップは「細かいルールが聞こえてこないのが頭痛の種」と語る。GDPRは日本の規則と比べものにならないほど細かく、複雑なことは確かに戸惑いを生む一因だ。
 戸惑いの原因として、企業がルール内容を甘く見てきたことも否定できない。ある素材メーカーの担当者は「当初はインターネット企業など消費者向け企業に関する法律だととらえ、それほど深刻に考えていなかった」と明かす。
 GDPRは2年前の2016年に採択されていたが、企業は後手に回った。EYアドバイザリー・アンド・コンサルティング(東京・千代田)の梅沢泉パートナーは「17年秋から問い合わせが目立つようになり、18年に入ってからも増え続けている」と語る。
 企業はそれぞれの方法で準備を進める。日立製作所グループは社員を対象に日本語、英語、中国語、イタリア語でeラーニングを実施。NTTデータはEU当局への72時間以内の通知体制を築くため模擬訓練を行った。
 対策が完了している企業も課題はある。KPMGコンサルティングはGDPRを順守しているかどうか「定期的なモニタリングが欠かせない」と説明している。
縦割り見直しも必要
 TMI総合法律事務所の大井哲也弁護士 GDPRは理想を掲げており要求が高い。指針が出ているが部分的で抽象的な面がある。欧州の個人情報保護に関する実務経験がないと読み解くことは簡単ではない。
 法律とIT(情報技術)システム両面にわたる横断的な助言のできる専門家が日本に少ないことも企業が対応に苦慮している要因だろう。全社での対応を迫るGDPRに対し、企業はシステムはシステム部任せ、法律は法務部任せという縦割りのあり方を改めることも必要だ。
経営層の理解不可欠
 KPMGコンサルティングの大洞健治郎ディレクター EUがGDPRを実施する狙いとして個人情報を取り扱う責任を果たしてもらうことがある。一方で、域内各国でばらばらのルールを統一することでデータを活用しやすくする市場をつくろうという意図も大きい。
 企業があらゆるモノがネットにつながる「IoT」や人工知能を利用する時代は、保護ルールを今まで以上に重視しなければならない。データガバナンスは経営の根幹にかかわり、経営層の十分な理解が欠かせない。

 

AI、深層学習特化プロセッサーインテル、来年出荷。

 米インテルは23日、人工知能(AI)の一種である深層学習を効率的におこなう半導体プロセッサーの商用出荷を2019年に始めると発表した。従来は一部の協業先だけに提供していたが、計算能力を大幅に改良して企業向けに広く売り出す。AIの利用が広がるなかで計算処理を支える半導体の開発競争も激しくなっており、品ぞろえの拡大を急ぐ。
 米サンフランシスコで初めて開いたAI開発者向けの会議で、インテルのナビーン・ラオ副社長が表明した。「ニューラル・ネットワーク・プロセッサー(NNP)」と呼ぶ深層学習に特化した半導体で、16年に買収した米ナバーナ・システムズの技術をもとに開発している。価格などの詳細は明らかにしていない。
 19年に売り出すNNPは大量のデータから特徴を抽出して「学習」をする性能を現行品よりも3~4倍に高めるという。学習は米エヌビディアのGPU(画像処理半導体)が得意な分野で、自動運転の研究開発などの用途で先行して普及しており、インテルは新製品で対抗する。
 インテルはAIの活用が広がると見込んで、学習以外にも幅広い計算に対応できるCPU(中央演算処理装置)や、回路の書き換えが可能な「FPGA」など多くの種類の半導体をそろえる戦略をとっている。23日の開発者会議でラオ氏は「半導体のハードやソフトともに(開発者の)コミュニティーが重要だ」と話し、AI開発者がインテル半導体を利用しやすい環境を整える考えを示した。

 

IT人材、イチから育成、LINE・グッドワークス…、獲得競争激化、各社が教育体制。

 IT(情報技術)関連のエンジニアを自前で育成する動きが相次いでいる。LINEがアプリ開発の未経験者向けのインターンシップを実施するほか、ソフト開発のグッドワークス(東京・千代田)は自社の講習会で育成した技術者を提携企業に紹介する。技術者の獲得競争が激化するなか、優秀な技術者を一から育てる考えだ。
 LINEは2018年夏に、プログラミングを経験したことのない人を対象にしたインターンを東京都、福岡市、京都市で実施する。講義は週1回、全5回の日程で、オンラインで講師に質問できる体制を整えた。これまでのインターンスマートフォンスマホ)向けアプリ開発の経験者が対象だった。
 LINEは対話アプリ上で利用者からの質問に人工知能(AI)が自動で回答する「チャットボット」など、外部企業がLINEのサービスと自由に連携できるように技術仕様を公開している。インターンに参加した学生が結果的にLINEに就職しなくても、同社のサービスに関連する技術を学んだ技術者が増えれば、サービスに厚みを持たせることができるとみている。
 知名度が高く、学生を集めやすい大手企業に比べて、中小企業は技術者との接点作りが難しい。グッドワークスは若い技術者と中小企業をつなぐ教育プログラムを立ち上げた。同社がプログラミング言語を学ぶ3カ月の講座の受講料から、シェアハウスの宿泊料まで負担する。
 18~30歳の若者が対象。事前にグッドワークスに10万円を支払う必要があるが、プログラム受講後にグッドワークスが紹介した企業に入社した場合、全額返金される。
 グッドワークスは12年から無料で1カ月間受講できるプログラミング学校を開いており、卒業した80人以上が同社に入社した。同社が提携する1500社のネット広告企業などでは技術者不足に悩んでおり、新しい教育プログラムの提供を決めた。
 IT人材仲介のギークスは子会社を通じ、5月に香川県でプログラミングスクールを開いた。ウェブサービス開発とスマホアプリ開発の2コースを用意した。二人部屋の寮に住み込みながら午前にプログラミング、午後に英語を数時間ずつ受講した場合、12週間で71万5502円(税別)。価格は比較的高いが、合宿感覚で集中して取り組めるという。
 ギークスは13年から、フィリピンのセブ島で同様の内容のスクールを開いている。転職前に受講する社会人も多く、卒業生をこれまで1500人を輩出した。海外よりも国内の方が受講者が気軽に参加できると考え、香川県の拠点で開催することにした。初年度は200人程度の受講を見込んでいる。
 AIやビッグデータなどの先端技術の需要が高まるなか、技術者不足が深刻になっている。IT企業だけでなく、メーカーや流通企業でも電子商取引(EC)サイトや社内システムの運用などに必要な技術者を自社で雇用する動きが出ており、技術者の争奪戦が激しくなっている。
 経済産業省は、IT人材が30年に最大で80万人不足するという見通しを示している。優秀な技術者の引き抜き合戦も激化している。各社が自前で育成する仕組みを整える背景には、スキルやモチベーションの高い技術者をつなぎ留める狙いもありそうだ。

 

インテル「専用品」で勝負、AI関連、新商品続々投入。

 米インテル人工知能(AI)分野で攻勢をかけている。23日には米サンフランシスコでAI開発者向けの会議を初めて開催。AI向けの処理に特化した新たなプロセッサーを2019年に投入すると表明した。矢継ぎ早の買収で取り込んだ技術の製品化も急ぐ。視線の先にあるのはAIで先行する米エヌビディアとの覇権争いだ。
 「深層学習(ディープラーニング)に最適化した初めての量産型のチップだ」。AI開発者向けの会議でインテルのナビーン・ラオ副社長は、新製品「ニューラル・ネットワーク・プロセッサー(NNP)」を紹介した。深層学習の「学習」を効率よく進められる。
 ラオ氏は深層学習の「推論」に向くCPU(中央演算処理装置)や、後から回路を書き換えられる「FPGA」と呼ぶチップ、映像解析に特化した消費電力の少ない半導体なども紹介した。
 もっとも、ほんの3年前までインテルにはCPUしかなかった。NNPは16年に買収したスタートアップ企業のナバーナ・システムズが保有していた技術。ラオ氏もナバーナの最高経営責任者(CEO)からインテルのAIトップに転じた。
 ドローンに載せる低消費電力の半導体はモビディウスの買収で手に入れたもの。「クラウドでのAI提供」を掲げるマイクロソフトのデータセンター向けに納めているFPGAも15年に買収したアルテラの資産だ。インテルがAI関連のM&A(合併・買収)に投じた金額は開示案件だけで320億ドル(約3兆4880億円)を超す。
 インテルがパソコン向けのCPUで稼いだキャッシュを惜しげもなくM&Aに投じるのは、AIが社会のあらゆる領域に浸透することで、半導体産業の勢力図が変わると考えているからだ。
 AI向けで快進撃を続けるエヌビディアの画像処理装置(GPU)は、ひと昔前はゲーム愛好家にしか知られていなかった。それがいまやデータセンターから自動運転車の研究開発現場にまで入り込んでいる。
 インテルがCPUでパソコン時代を築いたのが30年ほど前。一方で情報端末の主役がスマートフォンスマホ)に切り替わる時は迅速に動くことができず、スマホ時代の主役をクアルコムに譲らざるを得なかった。
 GPUで主役になろうとしているエヌビディアに対し、インテルは「専用」のAI半導体を全方位でそろえようとしている。勝ち残れるのは数社になるとみて、体力勝負に挑む。
 ただ、AI時代の盟主争いは米国の新旧半導体メーカーの競争にとどまらない。5月初旬、グーグルはAIをクラウドで提供するための専用プロセッサー「TPU」の改良機種を発表した。
 インテルがパソコン時代に続き、AI時代でも覇権を握るのか。それとも、スマホに続き主導権を他社に奪われるのか。レースは始まったばかりだ。

 


日立製作所中西会長経団連会長に就任

 最先端のデジタル技術で社会や産業がどう変わるか、わかりにくく未知だ。未知の分野だからこそ成長機会がある。潜在的なニーズをできるだけ早くつかむべきだ
 日立製作所の中西宏明会長が31日、経団連会長に就く。日本政府が掲げる「超スマート社会」構想に沿い、人工知能(AI)などデジタル技術による変革に取り組む。人口減少が進む日本は「課題先進国」。その課題を補う技術で世界に先行すべきだと説く。

 

データセンター、IT各社が増強、四国電系やNTTデータ。

 IT(情報技術)各社がデータセンター(DC)を増強している。四国電力のIT子会社でDC大手のSTNetは70億円を投じて高松市の拠点を拡張し、関東圏の企業などの需要に対応する。NTTデータも4月に開設した東京都三鷹市の中核拠点をさらに拡張する計画だ。
 STNetは2013年に稼働した高松市の拠点に2棟目のDCを建設して、設備の収容能力を倍増する。19年10月の開設を予定している。既存棟と合わせた延べ床面積は2万2000平方メートルとなり、DCの安全性に関する格付けで最高水準を確保する。

 

中独、自動運転で協力、首脳会談、対米摩擦を意識。

 中国の李克強(リー・クォーチャン)首相は24日、訪中したメルケル独首相と北京の人民大会堂で会談した。両首相は世界的に開発競争が激しさを増す自動運転の分野で、協力を強化することで合意した。トランプ米政権との貿易摩擦を意識し、ドイツなど欧州勢の取り込みに動く中国の姿勢が鮮明になっている。
 李首相は共同記者会見で「興隆する新たな科学技術革命に両国で一緒に向き合いたい」と表明した。具体的には自動運転の分野を挙げ「自動運転車の製造を手がける独メーカーの対中投資を歓迎する」と語った。
 2005年の首相就任後、11回目の訪中となったメルケル氏は「自動運転分野で中国との交流を深めたい」と応じる一方、「独企業を中国企業と対等に扱ってもらいたい」と注文もつけた。メルケル氏はその後、習近平(シー・ジンピン)国家主席とも会談した。
 中国は人工知能(AI)を駆使した自動運転技術の開発に国を挙げて取り組んでいる。北京市近郊に35年までにつくる習近平(シー・ジンピン)国家主席肝煎りの未来都市では、個人の乗用車をすべて自動運転にする計画だ。
 自動運転とそれに欠かせないAIの開発に力を注ぐドイツにとって、膨大なビッグデータと巨大な市場を併せ持つ中国との協力は魅力的だ。メルケル氏は25日にハイテク産業が集積する広東省の深〓を視察する予定で、中国との最先端分野での連携に意欲を示す。
 李首相は記者会見で「われわれは自由貿易の規則を守り、貿易の自由化を促進すべきだと主張している」とも強調した。トランプ政権が23日に自動車や自動車部品に追加関税を課す検討に入ったことを意識した発言とみられる。ハイテク分野でドイツとの協力を強化し、米国に対抗する狙いがうかがえる。

 

自動運転開発へ事故データ活用、政府、統計など民間に開放、技術革新後押し。

 政府は保有しているデータを民間に全面公開する「オープンデータ」の取り組みを進める。自動運転の技術開発に向け、交通事故の発生場所などに関する情報を2020年度にも公開。警察が持つ犯罪データの一部も利用できるようにする。貴重な資産であるデータを活用しやすくすることで、企業の技術革新や新しいサービスの普及を後押しする。
 政府は近く「官民データ活用推進基本計画」をまとめる予定で、この計画に具体策を盛り込む。IT総合戦略本部(本部長・安倍晋三首相)などの合同会議で決定し、6月中に出す成長戦略にも盛り込む方針だ。
 計画の柱の一つがオープンデータの促進だ。国の公式な統計だけでなく、役所が事務処理のために集めたデータも二次利用できる形で公開する。民間では収集が難しいデータを提供することで、新ビジネスや技術開発に役立ててもらう。
 自動運転の開発現場での利用をにらみ、交通事故データを公開する。事故に関する情報は複数の省庁にまたがる。警察庁が持つ発生位置の情報や、国土交通省が収集している車の急ブレーキの情報、文部科学省が持つ通学路の情報などを公開の対象とする見通しだ。
 自動運転では、最適な経路を選んだり事故を回避したりといった複雑な判断を人工知能(AI)にさせる必要がある。膨大な情報を与え、あらゆる状況を反復学習させることが不可欠とされており、データの量と質が重要になる。
 データの民間公開のための法改正は不要とみられるが、個人情報保護の観点で問題がないかなどを見定める必要がある。政府は公開システムの運用方法などを18年度中に決める方針で、20年度中にデータ公開を始めることをめざす。
 地域の防犯の強化に向け、警察庁が持つ犯罪に関する情報も公開していく方針だ。対象は発生した日時や場所など。警察庁から都道府県の警察に対し、18年度中に公開の基準を示し、順次、公開を始める。住民による防犯や、セキュリティー関連企業のサービスなどに生かせるようにする。
 行政手続きのオンライン化も進める。計画には「デジタルファースト法案」を早期に国会に提出すると明記し、各種の手続きで必要となる添付書類や押印、対面義務といった本人確認の撤廃などを盛り込む。
 個人向けの行政サービスでは、引っ越しや死亡、相続といった手続きをオンラインで一括で済むようにする。19年度から順次始める。企業は税や社会保険などの関係で、従業員の情報を複数の場所に提出しているが、これも一括で可能にする。法人設立手続きのワンストップ化も盛り込む。

 

データサイエンス入門、進化と重要性を平易に解説――竹村彰通著

 あらゆるものがネットにつながる「IoT」や人工知能(AI)など、情報技術の進化とともに新たなバズワード(流行語)が広がっている。「データサイエンス」もその一つで、最近は「データサイエンティスト」なる職業も人気を呼んでいる。
 著者は2017年に日本初のデータサイエンス学部を設けた滋賀大学の教授で、そうした新技術の重要性を解説した。データサイエンスは大量のデータを分析することで新たな発見を得る手法で「ビッグデータ」とも呼ばれる。AIの進化を促した「ディープラーニング(深層学習)」もその延長にあり、AIとビッグデータは表裏一体の関係にあると指摘する。
 そうしたビッグデータ分析を容易にしたのがスマートフォンやIoT関連のデバイスの登場だ。様々なセンサーから大量のデータが得られるようになったことで、現実世界をデジタル技術で再現できるようになった。データが「21世紀の石油」と呼ばれるようになったゆえんだ。
 本書は数学など専門的な話にはあまり立ち入らず、データ分析の重要性や分析手法などを一般の人にもわかりやすく説明した。ビッグデータに欠かせない「ハドゥープ」といった新技術についても解説しており、データサイエンスの基本を学びたいという人には格好の本といえよう。(岩波新書・760円)

 

イオン研究拠点、上海で開業式典

 イオンは30日、中国のIT(情報技術)企業と設立した合弁会社の研究拠点の開業式典を上海で開く。無人店舗の実験で先行する中国の技術を取り込み、店舗の省人化や無人化の実現を目指す。
 イオンは4月、ディープブルーテクノロジー(深蘭科技)と合弁会社を設立した。ディープブルーはアリババ集団が出資しており、人工知能(AI)やロボットなどの先端技術を研究開発している。同社は中国ですでにカメラの顔認証技術などを活用して無人で商品を販売するシステム「テイク・ゴー」を実用化している。
 ディープブルーが持つAIや無人店舗システムの技術とイオンの小売ノウハウを融合、無人店舗の研究開発を進める。