週刊人工知能ニュース6月3日から9日

 

企業の人材配置、AI使って助言、電通国際情報

 電通国際情報サービスは、人工知能(AI)を使って、企業の人材配置を支援するシステムを開発したと発表した。従業員の経歴や資格などの人事データを分析し、従業員が能力を発揮できる異動先を助言する。これまで人事担当者の経験や勘に頼っていた人材の登用や配置、育成などの判断を客観的なデータをもとにできるようにする。
 同社が販売する人事情報管理システムの新機能として、9月に提供を始める。

 

LIFULL「あのマンション気になるなー…」、カメラかざして物件情報、AI活用、まずiOS向け、家賃や間取りなど表示。

 不動産情報サイト「ライフルホームズ」を運営するLIFULLは、スマートフォンスマホ)のカメラでマンションを写すだけで画面上に家賃や販売価格などの物件情報を表示するサービスを始めた。散歩中などに気になる物件を見つけた際、直感的に情報を集められるため、利用者の満足度を高める。
 同社が提供する物件探し専用アプリに拡張現実(AR)を使った新機能「かざして検索」を追加した。アプリを通じてカメラを起動し興味のある物件の外観を写すと、外観画像や撮影した位置、カメラを向けている方角などから物件を特定。スマホ画面上に間取りや築年数、駅からの距離や家賃、販売価格などの物件情報を表示する。
 物件の特定には人工知能(AI)を活用する。スマホのカメラに映った画像から建物が写っている範囲をAIが判別。どの物件を映しているのかを、画像やスマホの位置情報、カメラが向けられている方角などの情報をもとに導きだす。物件情報はホームズに登録されているデータを表示する仕組みだ。
 賃貸用のマンションやアパート、新築分譲マンションと中古マンションが検索対象。ホームズに登録されている全国100万件の物件情報が検索対象となる。戸建て物件は検索できない。

 

AIで無人販売・店舗警備、イオンディライト、中国に研究拠点、日本で活用視野。

 イオン子会社で施設管理大手のイオンディライト人工知能(AI)を活用して店舗の効率化を進める。AI技術を持つ中国のスタートアップと設立した研究開発(R&D)拠点を5月末に中国・上海で開業。AIを活用した無人での商品販売や警備システムなどのノウハウを蓄積するのが狙いだ。アジア市場開拓の武器にするとともに、日本での活用を視野に入れる。
 「AIやIT(情報技術)を活用した防犯システムやロボットを開発して、店舗の省人化など大幅に生産性を向上させる」。5月30日、イオンディライトとディープブルーテクノロジー(深蘭科技、上海市)の合弁会社「永旺永楽深蘭科技」の開業式典で、イオンディライトの浜田和成社長は100人以上の参加者を前にこう意気込んだ。
 イオンディライトが今回手を組んだディープブルーはアリババ集団も出資しており、AIや無人店舗、ロボットなどの技術を持つほか、自動運転などの研究も進めている。中国国内にはロボットなどを製造する複数の生産拠点も持つ。
 30日の発表会ではディープブルーの技術を活用し、カメラの顔認証技術などを活用して無人で商品を販売する「ディライト・ゴー」のデモの様子を公開した。大型の冷蔵庫の取っ手の近くに手のひらの掌紋が認証できるセンサーが設置されており、事前に自分の掌紋と「支付宝(アリペイ)」などの決済サービスを登録すれば使用できる。
 手のひらをかざすと「カチャッ」という音が鳴り扉が開く。棚に並ぶイオンのプライベートブランドトップバリュ」のミネラルウオーターを取り出した時点で、取り付けられたカメラが商品を認識し、すでに決済は自動で完了している。
 このほかにも菓子などを乗せたロボットが「売り子」のようにフロアを自由に動き回り、顧客に商品を販売する技術も披露された。今後は清掃ロボットやAIを活用した防犯カメラで来店客の異常などを監視する警備システムなどの開発と商品化に乗り出す。
 まずは来春にイオンが江蘇省常熟市に開業予定のイオンモールの子供向けの衣料品などを販売する区画に警備システムと清掃ロボットを導入する。実用化のめどがつけば中国のイオンの総合スーパーなど約80店に順次展開する。
 イオンディライトの中国事業の売上高の約半分は既にグループ外の顧客だ。日系の電機メーカーなどの工場や、中国の地下鉄などの設備管理を請け負っている。こうした顧客網を生かして、「永旺永楽深蘭科技」で開発した商品を中国国内で販売していく。
 ディープブルーの陳海波最高経営責任者(CEO)は「(イオンとの)今回の協業をきっかけに日本市場の開拓にもつなげたい」と意気込む。イオンディライトは新会社で培った技術を生かして、東南アジアでの事業拡大にもつなげるほか、人手不足感が強まっている日本での活用にもつなげたい考えだ。

 

金型の調整、AIが指南、IBUKI、熟練の思考、モデル化、必要な人員、8割削減。

 プラスチック金型製造のIBUKI(山形県河北町、松本晋一社長)は、加工時の不具合を検知し、加工条件の調整法を自動で示す金型を開発する。熟練技術者の思考をモデル化して人工知能(AI)に記憶させる。熟練者でなくても加工時に細かい調整ができるようになり、必要な人員は現在の2割程度にできる。2021年4月以降の販売開始を目指す。
 開発しているのは「機差・環境差推定システム」。バリの発生や離型不良といった不具合が起きた際に、何が起きたかを言葉で、不具合が発生した際の数値と合わせて入力すると、AIがどんな不具合が起きているかを推定して射出圧力の調整などの対策を示す。AIが示した方法をもとに加工条件を調整する。
 金型設計などに関する言葉同士の関係性を表す図をAIに入力し、成型条件などの数値データとひもづける。不具合の発生メカニズムをパターン化でき、AIが不具合への対応策を指示できるようになる。
 図を作製する過程では、熟練技術者に金型設計などの知見をヒアリングする。技術者の思考などをAIで活用できるようにする事業などを手掛けるグループ会社と協力して作製する。使用する樹脂によって流れやすさなどの条件が異なるため、特性が違う樹脂ごとに図を作る。新しい金型の条件設定の作業に携わる人数が現在の2割程度に抑えられるという。
 同事業は中小製造業の研究開発を支援する、経済産業省の「戦略的基盤技術高度化支援事業」に採択され、補助金を受けた。17年度から19年度までの総事業費は約1億3千万円。
 これまで、製造した金型を金型メーカーが出荷前に検査したときには問題なくても、出荷先の企業で成型する際に、温度などの条件が製造元と異なるために成型不良が出るといったケースがあった。成型する企業の技術者がその都度条件を調整して対応していたが、海外工場で生産する場合などは現地に赴いて調整するのに時間がかかることがあった。
 IBUKIは金型にセンサーを取り付けて金型のたわみなどを検出する金型を開発し、加工条件を数値化している。熟練技術者でなくても適切な加工をできるようにしてきた。
 今後は加工条件の調整だけでなく、金型のメンテナンスまで遠隔でできる仕組み作りも目指す。まずは得意の自動車分野で実験を重ねたうえで、対象とする産業分野も将来はIT(情報技術)機器や医療機器などに広げていきたい考えだ。

 


台車止めずに仕分け、日立、AI判断、時間3割超短縮。

 日立製作所は倉庫や工場で、商品を運ぶ台車が動いたままピッキングできる技術を開発した。これまではピッキングするアーム型ロボットの前で台車は一時停止していた。何を取り出すか事前にカメラで認識し、ロボットの前に来たら即座にピッキングするようにした。台車が一時停止しなくても低速で進んでいる間にピッキングするので作業時間を38%短縮できる。
 倉庫では集荷・配送するための商品、工場では組み立てに必要な部品が台車に乗って運ばれている。これまではピッキングするアーム型ロボットの前で台車が止まり、箱の上からカメラが必要な商品を見分けてロボットに指示し、ピッキングしていた。
 新しい技術は台車がロボットの前を通る前に、カメラが箱に入った商品を認識し、どの商品をどう取り出すのがいいか人工知能(AI)がまず判断する。
 その後、AIを搭載した台車がロボットの前まで減速しながら最適なスピードで動き、AIを搭載したロボットがピッキングする仕組み。
 日立は英エディンバラ大学と共同で、これら3つのAIを協調して制御する技術を開発した。台車が毎秒50センチの速さで動きながら、停止しなくても、必要な商品や部品を取り出すことに成功した。従来のピッキング用アームロボットは商品をカメラで認識するために台車を止める必要があり、作業が遅くなるという課題があった。
 また、商品を正確に取り出すためには箱の中に無作為に積まれている商品が搬送中に崩れた場合に備え、あらゆる傾きを想定した商品形状をAIに学習させる必要がある。
 このシミレーション作業に商品1個当たり、5時間程度かかる。日立はこのシミレーション作業を短縮化し、ピッキング効率を改善することで2~3年後の製品化を目指す。
 インターネット通販の普及で物流倉庫の処理業務が急増しているが、商品の仕分けはまだ人手による作業が中心となっている。
 日立は今回の技術をもとに処理スピードや精度を高めたピッキングロボットシステムを開発し、倉庫や工場の自動化ニーズを取り込む狙いだ。

 

 

AI時代、人は「提案」集中、米国際法律事務所トップに聞く、ポール・ローリンソン氏、カナダ・独に拠点、新事業練る。

 人工知能(AI)の進化は法律事務所に変革をもたらしつつある。契約書の単純なチェック作業などはAIに代替されるなかで、法律事務所に求められる役割はなにか。世界最大級の国際法律事務所、米ベーカー&マッケンジーを率いるポール・ローリンソン・グローバルチェアマン(英国弁護士)に聞いた。
 ――AIがいずれ、弁護士の業務を奪うとの予測があります。
 「技術は人間を代替するものではなく、能力を拡張するものだ。AIを活用すれば、弁護士は機械でもできる単純作業に時間と労力を使わずに済む。いまや法律事務所は紛争解決などの事後的な業務にとどまらず、企業経営者のパートナーとして事業機会創出やリスク回避策などの提案を求められている。単純作業をAIに任せ、付加価値の高い提案に集中することで、事務所の競争力は高まり、より多くの収入を得られるようになる」
 ――事務所にAIをどう取り込みますか。
 「2017年初頭に『イノベーション委員会』を設置し、同委員会を中心に3段階の中長期的な業務改革戦略をたてた。第1段階はAIによる業務の効率化だ。すでに全拠点でAIを契約書やM&A(合併・買収)などの際の資産査定文書の精査に使い始めている」
 「第2段階では顧客企業の新たなサービスモデル構築を目指していくつもりだ。顧客に対して法的な助言をするだけでなく、AIなどIT(情報技術)を使った新事業創出を支援していく。今後2~3年かけて検討を深める」

 

知能の謎を解き明かす(1)東京大学特任准教授松尾豊さん

AI支える深層学習
匠の技を海外へ輸出
  今や「人工知能(AI)」という言葉をメディアで聞かない日はない。東京大学特任准教授で、AIを研究する松尾豊さん(43)は、現在のAIブームのけん引役だ。
 AI自体は実はそれほど新しい技術ではなく、1950年代と80年代に第1次、第2次ブームが到来しました。ただ当時のAIは現実の複雑な問題に対処できるものではなく、やがて下火になりました。現在AIが第3次ブームを迎えたのは、「深層学習(ディープラーニング)」という手法の開拓で、利用の可能性が広がったためです。
 深層学習では人間の脳の働きを模したネットワークを使うことで、膨大なデータからAIが自ら特徴をつかみ出し画像や音声を分類できるようになりました。例えば猫の写真を何枚もAIに読み込ませれば、自ら猫の特徴を会得し、猫の写真かそうでないかを見分けられるようになったのです。
 僕はこの技術が、日本の産業を再生すると期待しています。深層学習ができるAIを組み込んだロボットは、眼前の状況に応じて動けるため、人間の作業の大部分を代替できます。「目」を獲得した機械が誕生するのです。実際に建設、農業、食品加工分野に深層学習を使ったAIを取り入れる研究をしています。建設業界は人手不足が深刻です。目の技術を使えば、機械がその場の状況を見て図面通りに鉄筋を組むこともできるようになるはずです。
 農業分野では、トマトの収穫作業はAIを搭載した機械に向きます。水耕栽培で足場がしっかりしていることが多く、機械を動かしやすいのです。実の色を見極め、適度な力でつかみ、カゴに入れることは、今のAIにとってそれほど難しいことではありません。
  インターネットの分野を席巻したのは、グーグル、フェイスブックなどの米国企業だった。
 この20年、日本はIT(情報技術)分野でぼろ負けしてきました。しかし、機械系は強い。ここに勝機があると考えています。深層学習の技術を機械と結びつけ、あらゆる作業を自動化するのです。少子高齢化による人手不足の解消にもなりますし、輸出促進にも寄与します。
 食の分野への応用も有望です。店での調理、コンビニエンスストアの総菜づくりなどあらゆる作業が自動化できます。
 変わったところでは、「南部美人」という岩手県二戸市の酒造会社と組み、匠(たくみ)の技をAIで再現しようとしています。画像認識技術を使い、発酵過程のデータを分析中です。日本酒は海外でも人気があり、機械化すれば輸出も増やせます。
 AIに学習させれば、日本で行っている作業と同じことを、海外でも機械が自動的に行えるようになります。食品製造の機械化は巨大産業になります。しかも、ニューヨーク、ロンドン、パリなど世界中に持って行って、レシピなども配信すれば新しい食のプラットフォームになるかもしれません。

 

AIやIoT技術、「課題解決へ協創」、世界デジタルサミット開幕。

 人工知能(AI)を軸にした技術革新について議論する「世界デジタルサミット2018」(日本経済新聞社総務省主催)が4日午前、日経ホール(東京・大手町)で開幕した。「シンギュラリティへの挑戦」をテーマにし、あらゆるモノがネットにつながるIoT、第5世代(5G)通信などについて討議する。
 日立製作所の東原敏昭社長兼最高経営責任者(CEO)は講演で「社会課題の解決は1社だけでは困難。IoTの分野で協創しながら新たな価値を創出する」と他企業との連携の重要性を訴えた。ダイキン工業や自動車用エアバッグダイセルと協業したことに触れながら説明した。デンマークコペンハーゲンで導入した新たな鉄道運行システムや最先端のがん治療などの具体的な事例も紹介した。
 マット・ハンコック英デジタル・文化・メディア・スポーツ相はビデオ出演し「AIを含む最新技術が日英の絆をさらに深める」と述べた。欧州の個人情報保護の新ルール「一般データ保護規則(GDPR)」について「AIを効果的に活用するためにも積極的に対応すべきだ」と指摘した。
 米シンギュラリティ大学のジョナサン・ノウルズ上級フェローは、AIが人間の知性を上回るシンギュラリティについて、「その方向に進んでいることは間違いなく、日々加速している」と話し、遺伝子工学など各分野における技術革新の事例を紹介した上で「テクノロジーの進化は指数関数的だ」と強調した。

 

新薬、創薬期間を短縮、長期に収益貢献、田辺三菱、AIで申請効率化、大日本住友、統括者が一貫進行。

 新薬各社が創薬期間の短縮に力を注いでいる。田辺三菱製薬は承認申請の準備に人工知能(AI)を導入し、事務作業の効率化を図る方針だ。大日本住友製薬は開発部門をまたいだ統括責任者を配置した。後発薬の普及が進み、特許切れ薬(長期収載品)で稼ぐことは難しい。新薬の開発期間を短縮することで販売機会を増やし、収益力強化につなげる。
 田辺三菱製薬はAIの導入を進める。例えば臨床試験(治験)に関して、厚生労働省に承認を申請する作業の一部を人手から置き換える。
 申請資料は1万ページに及ぶことがある。そのうち化合物の科学的な分析データはほぼ定型の文章となるため、AIがこれまでの申請資料をもとに基本的な資料を作成。それをもとに人間が資料作りを進める。
 資料の量にもよるが、治験を終えてから申請まで、これまで半年~8カ月かかっていたものを、2020年ごろをめどに2~3カ月に縮めることを目指すという。
 開発期間を短縮し、競合製品より一日でも早く市場に投入すれば、それだけ売り上げを伸ばす機会も増えるとみる。同社は日立製作所とも連携しており、患者の臨床データ収集にAIを活用する取り組みを進めている。
 大日本住友製薬は17年秋から「プロジェクトリーダー」「プロジェクトディレクター」職を設けた。一貫したプロジェクト進行や戦略提言をするほか、予算の執行権限も持たせて意思決定のスピードを速める。
 これまでは開発の前期・後期で組織が分かれており、引き継ぎや情報・技術の伝達に時間がかかっていた。
 今後は治験計画の作成にAIやビッグデータを活用することも視野に入れる。適応疾患を選んだり、被験者の選択や除外基準を決めたりすることを想定する。また一定の投与量でのデータから、未知の投与量での効き目や安全性を予測したり、大人で得たデータから子どもでの有効性・安全性を予測したりすることも検討している。
 製薬企業の創薬では化合物の特許期間内に開発~治験~申請などを経て発売し、1000億円以上にのぼる開発費を回収しなければならない。
 特許期間は20~25年程度で、開発に10年以上かかることも少なくない。開発期間の短縮で収益貢献の期間が延び、何よりも患者に新薬を早く届けられる。
 審査時間を短縮する制度も整ってきた。塩野義製薬のインフルエンザ薬「ゾフルーザ」は厚労省が15年に創設した審査期間を短くする「先駆け審査指定制度」を使うことで、申請から4カ月と従来の半分以下の審査期間で承認された。
 17年10月には治験を一部省略できる特例制度もできた。重篤な疾病や希少疾患に対して、新規性があり劇的な効果が見込める場合に早期に承認する。

 

産業機器、AIで迅速修理、日立、稼働解析し故障箇所特定。

 日立製作所は4日、産業機器を迅速に修理できる新たなシステムを開発したと発表した。各機器の稼働状況や修理の情報を人工知能(AI)で解析し、故障箇所をいち早く特定し修理できるようにする。保守費用の削減だけでなく、設備の稼働率向上にもつながる。2018年中に北米や日本でサービスを始める。
 日立のIoT基盤「ルマーダ」の新たなサービスとなる。9月から空気圧縮機を手がける米子会社のサルエアーで実証試験を始める。開発したシステムは、各機器で故障が起きた際に不具合が起きた箇所を特定。さらに修理に必要な部品の発注なども簡単にできるサービスも提供するという。
 従来は機器の利用者がメーカーや保守会社と連絡をとり、修理が複数回になることも多い。また製造現場では機器に精通したベテラン技術者が減少し、機器の復旧までの時間がより長くなる原因にもなっていた。日立のシステムでは機器の情報を利用者とメーカー側が共有し、修理を的確に進めることにも役立つ。

 


新事業、IoTで後押し、各社、共創へ拠点立ち上げ――NTTデータ、専門家20人超常駐、OKI、体動かしアイデア

 NTTデータは6月、東京・六本木で顧客企業の新規事業立ち上げを支援する施設を開設する。人工知能(AI)や仮想現実(VR)機器を用意し、試作品開発を後押しする。OKIも顧客企業などと新ビジネス創造を促す拠点を開設した。AIなど技術革新が急速に進むなか、IT(情報技術)会社や電機メーカーが外部の人材や知恵を借りて実際のビジネスにつなげようとする試みが広がっている。
 NTTデータが6月11日に開く新拠点「アクエア」にはデザイン思考やマーケティングに詳しい専門家が20~30人が常駐する。延べ床面積676平方メートルで、博報堂と店舗設計の乃村工芸社と協力し、AIやあらゆるモノがネットにつながる「IoT」を活用したビジネスの企画を話し合ったりVR機器を利用したりできるスペースやアパレル店を模した実証実験用のスペースを設けた。
 技術革新統括本部の風間博之技術開発本部長は「AIやVR、脳科学技術やクラウドサービスを組み合わせ、顧客企業が発想したビジネスアイデアを目に見える形にできる」と話す。米グーグルのクラウドサービスや博報堂の調査データも利用できる。手厚い体制で、事業化につながるように後押しする。
 実証実験では乃村工芸社が設計したアパレルの模擬店舗を設営。客役の脳波、瞳孔の開閉などのデータを測定し、新規ビジネスの企画や試作品が受け入れられるかどうか詳しく検証できる。風間本部長は「実際の店舗のように実験できる」と話す。試作品について博報堂のモニター調査によるマーケティングもできる。
 NTTデータ傘下の英コンサルティング会社、RMAコンサルティングなどが同様の施設を欧米などで開設しており、ノウハウを移管する。風間本部長は「顧客が漠然と持つ事業のイメージを停滞させず、流れるように形作る場にしたい」と意気込む。年間十数社の利用を見込む。
 OKIはイノベーション(技術革新)を促す新拠点「夢スタ」を東京・虎ノ門の本社に設けた。同社は4月にイノベーション推進部を新設し、他社と連携して社会課題を解決する取り組みを進める。夢スタでは議論やイベントを通じて新たなサービスの開発をめざす。

 

AI活用オープンに、パネル討論、午前、技術教育見直せ、午後、5G軸に新産業(世界デジタルサミット)


 4日開幕した「世界デジタルサミット2018」では、人工知能(AI)の活用にはオープンイノベーションが重要との発言が相次いだ。企業トップらが、AIやあらゆるモノがネットにつながる「IoT」を、社会課題の解決につなげる取り組み事例を紹介した。AIが人間の知性を超えるとされるシンギュラリティ(技術的特異点)についても活発に議論された。
 午前開始のパネル討論「AI・ビッグデータが促すデジタル革命」では外部の知見を取り入れる「オープンイノベーション」や教育の重要性について議論した。
 アクセンチュアの保科学世氏は「日本は労働力不足で、企業がやりたいことができていない。AIの活用で人が本来やるべき仕事にリソースを割り当てられる」と強調。AIを使いこなせれば企業収益は4割増え、雇用も減らないとした。
 インターネット総合研究所の藤原洋所長は、AIで分析したデータの活用について熟練者が不足しているといい、「熟練者と初心者の情報共有が必要」と強調した。
 SIGNATE(東京・千代田)の斉藤秀社長はAIの活用にあたっては「教師となる事例がしっかりとデータ化されていけば、AIをうまく使えるチャンスが増えるのではないか」と話した。保科氏も「日本の質の高いサービスのデータを学習させることで世界に通用するAIサービスができる」と述べた。
 理化学研究所革新知能統合研究センターの杉山将センター長は「学生時代に文系・理系で分けるが問題。様々な人が最低限の技術的なリテラシーを身につける必要がある」と指摘。AIを使う側のリテラシーの抜本的な改革を訴えた。
 米ガートナーのピーター・ソンダーガード氏も「人の仕事をAIで完全に置き換えるのは不可能。仕事が減るとしても、残った人間の仕事が変わらなければならない」と企業内での再教育の重要性を訴えた。
 午後のパネル討論「5G・IoTが生み出す新ビジネス」には米クアルコム幹部らが登壇し活発な議論を交わした。次世代高速通信「5G」はあらゆる産業やアプリを巻き込み、全く新しいサービスが生まれるという見方で一致した。
 クアルコムのジム・キャシーシニアバイスプレジデントは「5Gでこれまでになかったビジネスができるようになる」と述べた。ノキアソリューションズ&ネットワークス(東京・港)のジョン・ハリントン社長は「消費者だけでなく、あらゆるモノをつないで新しいサービスが生まれる」と指摘した。
 具体的には「コネクテッドカー(つながる車)や交通輸送、エネルギーなど利用者やアプリの幅が広がる。IoTを活用したスマートシティーは5Gへの移行が加速するだろう」(ハリントン社長)と予測する。
 KDDI傘下のIoT通信ベンチャー、ソラコム(東京・世田谷)の玉川憲社長は「IoT時代は通信回線の単価が下がる。低価格でなければ成り立たないビジネスモデルがたくさんある。5Gの可能性は大きい。アイデアがある人はすぐにでも起業すべきだ」と提案した。
 GSMAのマッツ・グランリド事務局長は「5GはIoTやAI(人工知能)も融合し、インテリジェント・コネクティビティーになる。個人向けにとどまらず、バリューチェーンの上位に来る」と期待する。
 一方、個人情報やデータの取り扱い方が課題となっており、欧州では「一般データ保護規則(GDPR)」が始まった。ソラコムの玉川社長は「世界進出を目指すスタートアップが増えている。対応することで組織としても洗練される」と前向きにとらえる。IoT機器に対するサイバー攻撃のリスクについては、「IoTもセキュアな製品が積み重なっている。アクセスデータを制御し、技術的にカバーする」と話した。

 

チケット価格、AIが最適化、三井物産・ヤフーが新会社。

 人工知能(AI)を使い需要と供給から最適な料金を探るサービスが日本で急速に広がりつつある。三井物産は4日、ヤフーなどと共同でこのサービスを始める新会社を設立したと発表した。スポーツ観戦チケットやホテルサービスなど幅広い産業での採用を促す。人間が経験をもとに決めてきた価格決定をデータとAIで効率化する。
 需給の状況から価格を柔軟に変える仕組み「ダイナミックプライシング」の技術を持つ米ニュースター(バージニア州)と協力する。新会社のダイナミックプラス(東京・千代田、平田英人社長)は資本金が約10億円。三井物産が62・6%を出資した。ヤフーが34%、チケット販売大手ぴあも3・4%出資した。
 スポーツ観戦チケットの場合、販売実績やチームの順位、試合の曜日や天候に関するデータをAIで分析し1試合ごとに座席の価格を決める。
 三井物産は2017年にプロ野球ソフトバンクホークスヤクルトスワローズの試合の一部で実験し、需給に応じチケット価格を変えた。新会社は6月からサッカーJ1の横浜F・マリノスの試合にシステムを提供する。システムの提供やデータ分析の対価として収入を得る。
 AIは空席が多くなりそうなときは価格を下げ、消費者に購入を促す。首位攻防戦など人気が高い試合は価格を上げる。定価5000円の席が、条件によって4000円になったり6000円になったりする。
 スポーツのチケットは一般に、シーズン開幕前に決めた一律料金で販売する。ただ、活躍の状況などにより試合ごとに売れ行きの差が出てくる。システムで価格を柔軟に変え、消費者が「その価格なら買ってもよい」と考える料金を示す。
 新会社はコンサートなどイベントの興行主にも需給変動型料金の採用を提案する。駐車場やホテル、物流サービスなど特定の時期に需要が集中する分野でも利用を促す。
 需給連動型の料金は航空業界で先行している。ANAホールディングスや日本航空は航空需要の高い時期や曜日、過去の搭乗実績などをビッグデータとして解析して値段を決める。そのため年末年始など旅行や帰省で飛行機を使うことが多い時期は運賃が比較的高くなる。閑散期には可能な範囲で運賃を引き下げ、需要を喚起する。
 航空機は1便当たりの座席数が決まっており、空席が出ても在庫を保存しておけない。そのため限られた席数の中で料金を変動させて、収益を最大化させる管理手法が浸透している。
 ホテル業界も同様の経営課題を抱える。ホテル経営分析のスタートアップ企業、空(そら、東京・渋谷)はAIを使い、ホテル料金を最適化できるサービスを実施する。競合ホテルやイベントの開催状況をネット上で自動収集する特徴があり、1年先までの設定料金を毎日提案する。松村大貴社長は「経験や勘に頼りがちなホテルの業務を効率化できる」と話す。
 タクシー業界は18年度、需給に応じ迎車料金を変える実験を予定している。タクシーの利用は曜日や時間帯、場所、天候で左右される。運賃そのものは認可制で柔軟に変更するのが難しいため、迎車料金で試す。
 需給による料金設定は海外で積極的に活用されている。米ウーバーテクノロジーズが米国など各国で配車サービスの料金を決める際に、近隣の車両数などに応じて料金を変動させている。
 ▼ダイナミックプライシング 需要と供給の状況に応じて価格を変動させる技術やサービス。需要が集中する時期は価格を上げて需要を抑え、閑散期は値下げして喚起する。航空やホテルの価格決めに導入され、電気料金での活用が検討されている。AIの予測精度が上がっており、様々な産業で広がる見込み。

 

ロボの専門人材、中小企業に紹介、経産省が登録制度。

 経済産業省生産現場でのロボットの活用拡大に向け、7月にも中小企業に専門人材を紹介する人材バンクのしくみをつくる。現場の要望に合わせてソフトを入れたり操作を調整できたりする専門人材やこうした人材を雇っている企業に登録してもらい、中小企業に紹介する。あらゆるモノとインターネットがつながる「IoT」や人工知能(AI)技術を使いやすくし、中小の生産性向上につなげる。
 AIなどの技術進展や人材不足でロボを導入したい中小は増えている。メーカーが作る産業用ロボは規格品が多く、現場で実際に使えるようにするためには、専用のソフトを入れるなどの手間がかかり、導入の壁になっているという。
 経産省は、工場などにロボを導入する専門家の「システムインテグレータ」をデータベース化し、導入を検討している企業が問い合わせできるしくみとする。人材バンクを通じ、足元で約2万人のインテグレータを2020年までにを3万人に増やす政府目標の達成も後押しする。

 

AI社会へ企業育成、成長戦略素案、ベンチャー支援強化、雇用の流動化不可欠。

 政府は4日の未来投資会議(議長・安倍晋三首相)に成長戦略の素案を示した。あらゆるモノがネットにつながる「IoT」や人工知能(AI)を活用する社会の実現に向け、新技術の担い手となるベンチャー企業の育成を強化する。世界で進むデジタル革命の主導権を握り、生産性を高めていく狙いだが、雇用の流動化などイノベーション(革新)を創り出すための環境づくりは踏み込みが甘い。
 成長戦略はアベノミクスの「第3の矢(きょうのことば)」にあたる。今回の戦略は世界的なデジタル革命への対応に2つの狙いを込めた。一つは生産現場や行政でAIなどの導入を促し、コスト削減につなげること。もう一つは技術革新を通じて日本経済の競争力を高めることだ。
 デジタル革命の波に乗って世界有数の企業が生まれるようベンチャー企業の成長を後押しする。「ユニコーン」と呼ばれる、企業価値が10億ドル(約1100億円)以上の未上場スタートアップ企業などを「2023年までに20社創り出す」といった野心的な数値目標を掲げた。
 必要に応じて法規制を一時的に停止する「サンドボックス」制度を活用し、新規事業を支援するほか、外国人起業家の受け入れを増やす。IT(情報技術)人材の育成にも力を入れ、児童が20年度までに学習用コンピューターを授業で1人1台使えるようにする。
 ただデジタル革命で主導権を取るのに欠かせない、イノベーションを生み出す環境を整える政策は乏しい。
 富士通総研の早川英男氏は「同じ会社に勤め続けることを前提とした日本型の働き方では、巨大IT企業のような事業モデルは生まれにくい」と指摘する。年金や教育など働き方に関わる制度全般を見直し、雇用の流動性を高めないと、デジタル革命をけん引できる人材が育たないとみる。
 長年の検討課題である解雇の金銭解決は、規制改革推進会議が4日に提出した答申でも結論を先送りした。
 次世代技術に成長マネーが流れ込む仕組みづくりも課題だ。日本のベンチャー投資は1500億円前後。7兆円超の米国や2兆円台の中国との差は大きい。成長戦略は官民ファンドによる支援などを盛り込んだが、大企業や民間金融機関による資金提供をどう増やしていくかは描けていない。
 中国の産業育成策を明記した「中国製造2025」や、製造業のデジタル変革を中長期で促す方針を掲げたドイツの「インダストリー4・0」はインパクトが強く、国際的な注目度も高い。
 これに対し、日本の成長戦略は毎年策定しているにもかかわらず、波及効果が鈍い。各省庁による提案を積み上げて作られているため、各省庁の予算獲得の側面が色濃くなっている。
 成長戦略への民間企業の期待も低下しているのが現状だ。内閣府の調査によると、上場企業は今後5年間に見込む日本の実質経済成長率は年1・1%。これは安倍政権発足後の13年度調査(1・5%)を下回る。戦略ではこのほか、プラットフォーマーと呼ばれる巨大IT企業の台頭に対応し、利用者への公正性確保といったルールを整備する方針なども掲げた。
 19年以降の成長戦略を議論する場としてビジネス現場に近い人材による「産官協議会」を設置する。首相は「本年を『第4次産業革命元年』とし、自動運転、ヘルスケア、デジタルガバメント(電子政府)など重点分野に設ける」と話した。

 

先端IT人材、年に数万人、イノベーション戦略素案、25年までに育成。

 政府は5日、首相官邸イノベーション戦略調整会議(議長・菅義偉官房長官)を開き、分野を横断して科学技術の革新を目指す「統合イノベーション戦略」の素案をまとめた。人工知能(AI)などを扱う最先端のIT(情報技術)人材の育成が柱で、2025年までに年間数万人規模を育てる目標を盛り込んだ。6月中旬に閣議決定する方針だ。
 同戦略をつくるのは初めて。21年度までに東京大学など主要6大学を中心にIT人材を育成するカリキュラムを設ける。AIの普及が本格化する中、内閣府は20年に先端IT人材が約5万人不足すると試算しており人材育成を急ぐ。
 AIを活用しやすい環境も整える。研究機関や企業が持つ医療・介護や農業、防災など分野ごとに異なるビッグデータの書式を5年後までに共通化する。書式を統一すれば、AIが複数分野の膨大なデータをまとめて解析できる。災害と交通の情報を組み合わせ、災害時に自動運転車を安全に避難誘導する技術の実用化などにつなげる。
 大学の研究力の強化策も盛り込んだ。19年度にも民間投資の呼び込みに積極的な大学に運営費交付金などを重点配分する制度を始める。大学教員の年俸制も拡大し、成果を報酬に反映しやすくする。研究費の重点配分で若手研究者が研究しやすい体制も整える。

 

中小の生産ライン、IoTで測定、旭鉄工、初期費用10万円、業務効率化促す。

 トヨタ自動車グループを主な取引先とする部品メーカーの旭鉄工(愛知県碧南市)は、中小企業向けの生産ライン測定システムを本格的に売り出す。あらゆるモノがネットにつながる「IoT」をいかし、生産性や品質の向上に役立ててもらう。初期費用を10万円と大手の1割以下に抑え、2020年度をめどに内外2000社の導入を目指す。
 システムは旭鉄工子会社のiSTC(愛知県碧南市)が提供する。設備の稼働状況と生産の所要時間をリアルタイムで把握できるのが特徴だ。不具合の多い設備や作業を集中的に改善することで、生産性を高める。
 中小企業でも導入しやすいように機能を絞り、価格を抑えた。システムの配線やサーバーは不要で、生産ラインに1個50円の光センサーや250円の磁気センサーをつける。ラインで部品の動きを感知し、1個できるごとに信号を出す簡単な仕組みで「生産個数」「停止時刻」「サイクルタイム」を正確に把握できる。
 初期費用は10万円で、月間利用料(5ライン)は3万9800円から。製造から年月の経過した機械にも対応可能という。データはクラウド上に集め、現場でスマートフォンなどで分析できる。大手のシステムを導入する場合、一般的に数百万円から数千万円かかる。
 旭鉄工の木村哲也社長はトヨタの出身。現場で徹底的にムダ、ムラ、ムリを省く「トヨタ生産方式」を中小企業にも広げようと、今回のシステムを試験を含めて約100社に導入してきた。旭鉄工でも西尾工場(愛知県西尾市)で生産性が高まり平日の残業がゼロになったという。
 システムを導入した後のデータ活用や経営支援も行う。iSTCは外販先の5日分のデータを分析し、生産ラインの診断リポートも月額9800円で提供。経営コンサル事務所や各地の商工会議所などと連携し、全国で販売先を増やす。今年5月にはタイ工業省と覚書を締結し、タイで7社が計20の生産ラインで試行している。
 18年1月には人工知能(AI)の研究者を採用した。自動で生産ラインの異常を見つけたり、予測したりするシステムの開発にも乗り出す。
 好調な世界経済を背景に、自動車や機械を中心に取引先から増産要請を受ける中小企業は多い。一方で人手や設備、資金などが不足がちなところも多く、生産性の底上げが急務になっている。

スマホなどで生産ラインの稼働を分析する(愛知県碧南市にある旭鉄工の工場)

 


AI起業家予備軍支援、孫氏のM&A番・仁木勝雅氏、スター誕生の助っ人に

  10兆円ファンドをひっさげ世界の投資関係者が注目するソフトバンクグループの孫正義会長兼社長。派手なM&A(合併・買収)を裏方の立場から支えてきた知る人ぞ知る人物がいた。その男は2016年にソフトバンクを去ったが、わずか半年で復帰。帰ってきた孫氏の「M&A番」が目指すのは、未来の人工知能(AI)のスター誕生だ。
 17年4月、東京・有楽町。孫氏が毎年開く若者向け講演会の直前。仁木勝雅氏(50)が姿を現すと、孫氏はニヤリと笑って告げた。「ウエルカムバック。やっぱり戻って良かっただろう」

仁木氏は、17年9月にソフトバンクグループの100%出資で、AI人材育成のディープコア(東京・港)を設立。その社長に就任した。
 帰ってきたM&A番の新たな目標は「日本から世界に通じる起業家を生み出す」ことだ。
 投資に通じた仁木氏はAI専門の投資ファンドも組成。資金規模は最大60億円。カネの面でも起業家を支援する。
 ただ、仁木氏は「ソフトバンクみたいな“ギラギラの投資”じゃない」と話す。その真意を「AIで起業できそうな気がする、という程度の人にも関心を持ってもらいたい」と説明する。技術に自信はあってもビジネスには疎いような起業家予備軍にも門戸を広げるというわけだ。
 そのための支援体制も整えた。東京大学の近くに24時間利用可能の共有オフィス兼研究室を完備。AI研究で有名な松尾豊・東京大学特任准教授と、孫氏の実弟で連続起業家の孫泰蔵氏をアドバイザーに迎えた。
多士済々な人材
 今年2月に第1陣として、200人ほどの応募者から75人を選抜した。大半は20代だが、独学でディープラーニングを学んだ40代の現役医師まで多士済々。まだ緒に就いたばかりだが、仁木氏は「日本の大企業にはAI人材が足りない」と、AI起業支援の可能性を語る。
 「起業してみてダメならリターンマッチすればいい。そんな起業の循環までつくっていきたい」と言う仁木氏。若き起業家候補たちを前に、孫氏の隣で巨額のカネを動かしていた頃とはひと味違った楽しみを感じているようだ。


iPhoneの次、見えた、アップル世界開発者会議――音声認識、Siri使いやすく。

 人工知能(AI)を用いた音声アシスタント「Siri(シリ)」を使いやすくするためのアプリ「ショートカット」も発表した。アプリと呼びかける文言などを設定しておくことで連携させやすくなる。
 利用者が自分の生活に応じてよく使うアプリとシリを操作する方法を設定しておくことで、今までよりも簡単にシリを使えるようになるという。今秋に更新予定のOS「iOS12」で利用できるようになる。
 シリは音声操作の先駆けだったが、利用者のデータを吸い上げない方針などが影響し、音声アシスタントとして賢くなるスピードでグーグルの「グーグルアシスタント」や米アマゾン・ドット・コムの「アレクサ」などに後れを取っている。
 スマートスピーカーの市場が拡大したことで音声操作も普及。グーグルは5月の開発者向け会議で美容院やレストランの予約をこなす音声AIのデモを披露した。だがシリは正答率などで後じんを拝している。
 アップルが開発中とされるAR対応の眼鏡でも「声が(人と端末の)新たな接点になる」と、AR端末や部材を手掛ける米コピンのジョン・ファンCEOは言う。アップルにとって音声での劣後は致命的になる。

 

丸紅、監視カメラにAI活用、通信コスト安く。

 丸紅は人工知能(AI)を搭載した監視カメラを使ったサービスを始めた。画像に映る人物の顔認証や車両のナンバープレートの検知に活用できる。子会社の丸紅無線通信(東京・中央)がサービスを手掛け、年5千~6千台の導入を見込む。
 米半導体大手エヌビディアのGPU(画像処理半導体)をカメラに搭載。必要なデータをAIで特定した上でクラウドに送信する。全ての画像を送信しサーバーでAI解析する場合と比べ、通信費を1割未満にできる。
 丸紅とOKIが出資する丸紅OKIネットソリューションズ(東京・港)が営業やシステム構築で協力する。丸紅の顧客基盤のほか、OKIが強みを持つ金融や流通業界に販売していく。カメラの導入費用は1台あたり数十万円。通信やクラウド利用料は毎月1万円からと割安にし、合わせた費用は低減できるという。
 監視カメラ需要は大規模なイベントでのテロ対策などにより急増。防犯対策のほか、車両ナンバーの登録地域などは顧客分析への活用も期待できる。監視カメラの国内の市場規模は2020年には17年比2・6倍の260万台に伸びる見込み。

 

 

議事録AI、手軽に、オカムラと日本IBM

 オフィス家具大手のオカムラと日本IBMは働き方改革向けシステムの販売で協業する。IBMの人工知能(AI)「ワトソン」を応用した議事録作成システム「トークビュー」を開発し、オカムラが7日に発売する。働き方改革法案が今国会で成立する見通しであることを追い風に、会議の効率化などを模索する顧客企業に売り込む。
 会議の参加者の音声をインターネット経由でワトソンのクラウドに伝送するとAIが音声を認識。ほぼリアルタイムで文字データに変換して会議室のモニターに表示する。日本語、英語、中国語など9カ国語に対応する。
 これまでの議事録作成AIは顧客に合わせてシステムの作り込みが必要なものが多く、利用できるようになるまでに時間やコストがかかるという。オカムラは専用パソコンやマイク、ソフトを組み合わせて提供し、注文から1週間で利用できる手軽さを売り込む。価格はマイク5本セットで税別650万円から。設置費用や1年間のソフト利用料を含む。
 オカムラは近年、オフィス家具の販売だけでなく、業務効率を高めるオフィス環境の提案に力を入れている。IDCジャパンによると、働き方改革関連のIT(情報技術)市場の規模は17年に2兆円を突破した。今後も年平均7・9%のペースで成長し、21年に2兆6622億円に達する見込み。成長市場に注目し、IT企業だけでなくオカムラのような異業種の参入が増えつつある。

 

AIスピーカー、言い間違い注文は無効、経産省、EC規範に見解、「タイヤ」のつもりが「ダイヤ」注文。

 経済産業省は声によってインターネット販売の商品注文などができる人工知能(AI)スピーカーについて、テレビの音声や言い間違いによる発注は無効であるとの見解をまとめた。消費者保護の一環で、メーカーに対しては注文を確認する機能の設置を推奨する。6月にも電子商取引(EC)に関する規範「電子商取引準則」を見直し、見解を盛り込む。
 政府の法解釈を示す準則に法的拘束力はないが、企業の多くや消費者が参考にする。海外ではテレビの音声やペットのオウムの発声音で勝手に発注されるなどの事例が報告されている。人による注文でも、たとえば「タイヤ」を買おうとして「ダイヤ」と言い間違った場合の救済方法が課題となっている。
 準則では、テレビ音声などの発注の場合、実際には注文の意思表示がなかったと解釈し契約は成立していないと見る。言い間違いも一般的に起こりうるとし、契約は無効との見解を示す。ただし、ウェブサイトやアプリで確認する仕組みになっている場合には、発注者に過失があると認定される可能性がある。
 AIスピーカーをめぐっては、5月下旬にも米国で勝手に所有者の会話を録音して知人に送ってしまうトラブルも起きるなど、誤作動に対する警戒感が強まっている。

 

安川電機、「見える工場」を支援、ソフト提供開始、AIで稼働データ分析。

 安川電機は6日、生産現場の様々なデータを収集分析できる「見える工場」向けのソフトウエア「YASKAWAコックピット」を開発し、提供を始めたと発表した。生産設備や検査装置を監視・診断し、故障予知や不良品検出に生かす。顧客企業の既存システムと連携させることもできる。
 同ソフトは生産現場の装置ごとに稼働データを集め、日本IBMの人工知能(AI)の「ワトソン」などで分析する。顧客が既に持っている作業者の動作分析や在庫管理システムとも連携。普段と違う動きの工程や異常値を察知できる。
 安川電機はロボットやモーターの販売だけでなく、ビッグデータに基づく生産支援サービス「アイキューブ メカトロニクス」を普及させる方針で、中核ソフトの提供で弾みをつける。

 

住宅施工、助っ人ロボ、積水ハウスが実演、アシストスーツも。

 積水ハウスは住宅施工現場にロボットとアシストスーツを導入する。滋賀県栗東市の訓練施設で6日、公開した。作業員の高齢化などで人手不足が懸念されるなか、負担の重い作業をロボットに任せる。労働環境を改善して人員確保を狙う。
 ロボット開発のテムザック(福岡県宗像市)と共同開発したロボットは石こうボードを天井に張り付ける。作業員がタブレットで指示を出すと、2機が通信しあいながらぶつからないよう動き、ボードを持ち上げてビスで固定した。動作速度の向上や小型化を進め、2020年の本格導入を予定する。
 12月にも導入するアシストスーツは、米社の製品を改良した。軒裏の工事など上を向いて作業するときに腕を支える。少ない力で重量物を持ち上げたり、同じ姿勢を長く保ったりできる。現場で試したところ、作業員の負荷が大幅に軽くなったという。
 積水ハウスの住友義則・施工部長は「(人手不足などで)施工力の確保が課題になっており、期待している」と述べた。一方、建材をつくる静岡工場(静岡県掛川市)には外壁の生産ラインに人工知能(AI)を活用した品質検査システムを導入した。品質向上やコスト削減につなげる。

 


ブロックチェーン、関連求人4.2倍に、民間調べ。

 IT(情報技術)関連の人材を求める動きが強まっている。人材サービスのビズリーチ(東京・渋谷)がまとめたIT関連の求人動向によると、件数が最も多かったのはAI(人工知能)や機械学習に関する求人だった。あらゆるモノがネットにつながるIoT関連の引き合いも多く、人材獲得競争が一段と激しくなりそうだ。
 同社の求人検索エンジン「スタンバイ」に掲載された約840万件を対象に、「ブロックチェーン(分散型台帳)」「自動運転」「フィンテック」などのキーワードを抽出して調べた。
 件数が最も多かったのはAIや機械学習に関わる求人で1万9959件、次いで「IoT、M2M(マシン・ツー・マシン)」の1万7660件だった。いずれも、最高提示年収は4000万円以上だった。IT業界に限らず、教育関連やメーカーなど幅広い業種の採用意欲が強い。
 前年に比べ急増したのが「ブロックチェーン」に関わる求人で、4・2倍となった。仮想通貨関連の新規事業立ち上げを目指す通信会社やIT関連企業の募集が目立つ。サイバーセキュリティーに関わる人材も金融機関や保険会社などが広く募集している。IT人材不足は今後も一段と激しくなると予想され、年収も上がっていきそうだ。

 

ソフトバンクロボティクス、床洗浄、無人走行ロボ、ルート記憶、自動運転。

 ソフトバンクグループでロボット事業を手掛けるソフトバンクロボティクス(東京・港)は、自動運転技術を搭載した床洗浄機を8月に発売する。一度ルートを覚えさせれば、無人で床掃除が可能。人手不足が深刻化する中、清掃コストを削減したい商業施設などでの利用を見込んでいる。4施設ですでに試験的に導入しており、管理・清掃の自動化を進める三菱地所なども検討している。
 床洗浄機の名称は、「RS26 powered by Brain OS」。運用額10兆円規模のソフトバンク・ビジョン・ファンドが投資した米ブレインコープ(カリフォルニア州)が開発した人工知能(AI)を搭載した。清掃するエリアをいったん人が運転することで地図データを作成して記憶。スタートボタンを押せば、次回以降は自律走行する。
 先頭にあるカメラや複数のセンサーで自らの位置を把握する。通行人や障害物があった場合は、停止したり回避したりしながら走行する。価格は非公表だが、人が乗るタイプの清掃機とほぼ変わらない価格設定にするという。
 5月からアリオ亀有(東京・葛飾)、ゆめタウン廿日市広島県廿日市市)、大阪駅大阪市北区)、阪急西宮ガーデンズ兵庫県西宮市)の4カ所の商業施設が試験的に導入している。
 ユニクロなど約200のテナントが入るゆめタウン廿日市では、2、3階の通路の床清掃をRS26が担う。1フロア6千平方メートルという広さを掃除するにはかなりの人手がいるため数年前から掃除ロボを探していた。ソフトバンクロボティクスの商品は、米国の大手スーパーなどでの実績もあると知り、導入を決めた。
 ゆめタウン中国地方を中心に約65店舗がある。運営会社イズミグループで施設管理を担うイズミテクノ(広島市)によると、廿日市店や他の店舗も含めて数十台を導入する方向だ。「自動運転であれば清掃の品質も一定になるし、人件費の削減などで20%程度生産性が上がるとみている」(同社)という。
 三菱地所は5月末、RS26の試験走行会を東京丸の内の地下道で行った。集まった同社社員や清掃関係者からは「1回ルートを覚えれば次回は自動というのは楽。清掃の範囲やスピードも申し分ない」との声があったという。
 三菱地所は4月からビルの警備に綜合警備保障(ALSOK)の警備ロボを導入するなど、人手不足や将来の人口減少を見据えて建物の管理・警備の自動化を進めている。お掃除ロボの導入についても前向きに検討しているという。

 

知能の謎を解き明かす(4)東京大学特任准教授松尾豊さん(人間発見)

AIは人類のために
欧州で法人格の議論
  2017年2月、松尾さんは人工知能学会の倫理委員会委員長として、人工知能(AI)開発の倫理指針をとりまとめ、公表した。
 AI開発を進めるうえで、社会との関わりを考えることは重要です。人間のような知性を持ち、自律的に学習し行動するAIは、社会に与える影響も大きいからです。指針では法規制の順守やプライバシーの尊重などを、開発者の原則として定めました。
 同時期、世界でも同様の指針作りの動きがありました。米カリフォルニア州ではAI研究者、倫理学者、社会学者などが世界中から集まり、「アシロマAI23原則」を作りました。僕も渡米し議論に参加しました。強制力はありませんが、米テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)など多くの著名人が支持しています。「AIは人類のためにあるべきだ」というコンセプトは、日本の人工知能学会の指針と共通しています。
 ただ、アシロマ23原則にはAIの暴走を将来のリスクとして指摘し、対応を促す項目があるのですが、僕はAIは道具であって、生命のように暴走することはないと考えています。
  12年に人工知能の学会誌の編集委員長に就任。表紙の絵を女性型のロボットが掃除をしている姿にしたら「女性蔑視」とインターネットで“炎上”してしまった。
 人工知能学会は会員がほとんど男性です。「男性会員には女性型ロボットの方が好まれるかもしれない」というぐらいの気持ちでした。しかし、実際には「女性」と「掃除」がキーワードとして並ぶことで反発を受けました。これが男性型ロボットだったら単なる風刺ですが、ジェンダーに対する配慮が足りなかったと思います。
 AIの研究でももっと女性が活躍すべきだと思いますが、僕の研究室にも女性はほとんどいません。AI開発にも女性ならではの視点は必要です。プログラマーの女性比率が高いイスラエルで聞いた話ですが、男性と女性ではプログラマーの育成方法、教え方も違い、女性を教えるのは女性が向いているそうです。女性でプログラミングができる人を増やさないと、後進も育ちません。
  欧州では、AIに「人権」を与えるべきかどうか、との議論がある。
 欧州で行われているのは、「人権」という言葉から我々が想起する「基本的人権」ではなく、「法人格」を与えるべきかどうか、という議論だと理解しています。例えば、米ウーバーテクノロジーズの自動運転車が事故を起こしたとき、ウーバーという会社ではなく、同社の人工知能を営業停止にした方がよいかもしれません。
 ある企業のAIが何か問題を起こした場合に罰を与える、あるいはある基準を満たしたAIには信用を付与する、もしくは市場に上場させるなど、そうした法律行為の受け皿としての法人格は認めた方が都合が良い場合もあるかもしれません。AIの可能性を広げる面白い議論だと思います。

 


岐阜大、金型開発の拠点、デンソーなどと、IoTやAI活用。


 岐阜大学は7日、「スマート金型開発拠点」を設けた。デンソーオムロン、太平洋工業など10社と共同研究講座を立ち上げる。あらゆるモノがネットにつながる「IoT」や人工知能(AI)をつかい、新しい金型の研究開発に取り組む。
 国の補助金7億円を活用し、3階建ての研究棟(延べ床面積約1100平方メートル)に装置を整備した。工学部の教授らが民間企業と組み、金型の異常を事前に予測して、不良品の発生を抑える仕組み作りなどを研究する。デンソーは鍛造分野、オムロンは射出成型、太平洋工業はプレス分野で研究開発を進める。
 7日は同大で開所式があり、森脇久隆学長は「拠点からの発信で金型の国際基準を押さえていきたい」とあいさつ。企業を代表して太平洋工業の小川信也社長は「研究のスピードを上げて人材を育ててほしい」と述べた。

 

札幌でAI人材育成講座、3社・団体、基礎から応用まで。

 北海道で人工知能(AI)関連技術を開発する技術者不足が見込まれる中で、札幌の3社・団体が人材育成に乗り出す。AI開発に必要な知識やビジネスに活用する方法など、基礎から応用まで5コースの講座を6月14日から札幌市内で順次始める。企業経営者やエンジニアの卵など幅広く受講者を募る。
 「札幌AI人材育成プログラム」は札幌市の産学官組織「SAPPORO AI LAB」、サツドラホールディングス傘下の「AI TOKYO LAB」、IT(情報技術)分野の人材育成を手がける北海道ソフトウェア技術開発機構が企画・運営する。
 技術習得に関する上級者向け講座では、AIエンジニアとして開発の基礎知識のほか、機械学習や画像認識の演習を通じたAIの活用方法を5日間で学べる。ビジネス応用に関するAIプランナーの育成講座では、開発時の課題や知的財産の扱いなど、より実践的な内容を学ぶ。
 受講料は入門編の2講座は無料、他はAIエンジニア講座が32万4千円、ディープラーニングに特化した講座が6万4800円。AIエンジニア講座は経済産業省の補助対象となる予定で、個人受講者は料金の最大7割が助成される。
 ビジネス応用講座はさっぽろ産業振興財団、技術習得講座は北海道ソフトウェア技術開発機構で申し込みを受け付ける。

 

自動運転、バスで実験、小田急など、乗客の動きも把握。

 小田急電鉄神奈川中央交通慶応義塾大学は、同大学湘南藤沢キャンパス(神奈川県藤沢市)で自動運転の走行実験を公開した。緊急時だけ運転手が操作する「レベル3」の自動運転技術を採用した小型バスが走行した。10日には市民向けの試乗会を予定する。同キャンパスと最寄り駅を結ぶバス路線の自動運転を目指す。
 レベル3は原則システム操作が運転を担うが、緊急時には人が操作する程度の技術水準。ソフトバンクグループ傘下で自動運転を開発するSBドライブ(東京・港)が開発したバスを使った。
 バスは全地球測位システム(GPS)などで現在地を認識しながら、事前に設定した約500メートルのルートを5分ほどで自動運転で走行した。レーザーセンサーを搭載しており、前方40メートルを通行する自動車や二輪車、歩行者を見分け、急な飛び出しなどにも対応できる。
 車内の様子を把握するため、人工知能の画像認識技術を使い、乗客の頭の動きから行動を推定する。バス走行中に乗客が移動した場合には放送を流して注意喚起する。乗客の転倒を認識した場合には、遠隔操作する運行会社に通知するシステムも披露した。
 今後、実証実験を重ねて安全性を確認する。2020~21年をメドに一部路線での実用化を目指す。バス運転手は人手不足だが、社会の高齢化に伴い公共交通の重要性も増している。自動運転バスが実用化すれば、より少人数できめ細かな交通サービスが実現できる可能性があるという。

 

中国自動運転、「爆速」の新興勢――中国政府、資金支え、摩擦一因に、米、ビザ制限で対抗。

 「本当にありがたい。地元政府からの補助金のおかげで安心して仕事ができますから」。景馳科技のある幹部はこう話す。広東省の同社本社の家賃は全て地元政府が負担する。本社横には社員100人超が入居できる立派な新築マンションが用意され、家賃は政府が負担し社員は無料で入居できるという厚遇ぶりだ。
 中国は、自動運転や人工知能(AI)など最先端分野の有力企業の成長を、補助金で強力に後押しする。米国に並ぶ技術大国を目指す国家戦略「中国製造2025」があるためだ。だが、こうした手法を米国は不公正と強く反発、米中摩擦のひとつとなっている。
 米国は最近、対抗策に出た。ハイテク分野での中国人に対するビザの発給制限だ。11日から中国人留学生に対し、従来は最長5年間だったビザの有効期限を1年間に短縮する。留学生だけでなく、ハイテク分野で企業や大学に勤務する人のビザ取得も厳しくした。米国で学んだ中国人が、中国政府の支援で帰国後に起業し、米国に対抗するケースが多いためだ。

 


知能の謎を解き明かす(5)東京大学特任准教授松尾豊さん(人間発見)

研究室で若手を育成
利用者の知識高める
  「松尾研究室」は、人工知能(AI)起業家を輩出。東京大学がある東京都文京区の「本郷バレー」の核となる。
 2005~07年の間、米スタンフォード大に客員研究員として留学しました。シリコンバレーでは学生や研究者がアイデアを提案し、あっという間に投資家から資金を集め起業し、利益を研究開発に再投資していました。「複利」の循環をつくった者が勝つ、与えられる研究費を元手に論文を書いているだけでは駄目なのだと学びました。授業もiPhoneアプリの作り方やインターネット広告の仕組みなど、実用的なものでした。
 最新の技術を教えることは大事です。僕が15年に90人の学生を対象に始めた深層学習(ディープラーニング)の講義は毎年、受講生が倍々で増えています。先端技術の知識は事業でも武器となるため、学生は自然に起業に関心を持ちます。
 学生は経験が足りないので、ビジネスモデルの構築方法も授業で教えます。僕の研究室は企業からの共同研究費や寄付だけで運営されています。学生は企業との共同プロジェクトを通じて、企業の考え方、ビジネスマナーなどを身につけていきます。研究室ではこうしたグローバルに当たり前のことを実践しているにすぎません。
  17年には一般社団法人日本ディープラーニング協会(東京・港)を立ち上げ、ビジネスパーソンなどを対象とした検定試験を始めた。
 ここ数年、なぜ世界の時価総額トップはIT(情報技術)企業だらけになり、日本企業が1社も入っていないのかを考え続けました。大きくふたつ理由があると思います。ひとつは年功序列です。ITの世界は20代が最強なのです。米国のIT業界で著名な人たちは皆、20代で大活躍し、経営者になります。でも日本では20代は下働きをしています。勝てるわけがありません。
 もう一つの理由は、ITシステムの利用者のリテラシーが低いことです。顧客となる企業の担当者や経営者にITの知識が乏しいから、工数の多い高額なシステムを勧められ、良しあしが判断できないまま購入してしまう。利用者側に目利きがいなければ、技術力のあるベンチャーは営業力のある大企業に勝てず、育つ余地がないのです。それが日本全体のITの発展を阻害したとみています。
 顧客企業側に、AIって何か、どういう技術があって、性能の指標にはこういうものがあるなどの一般的知識を身につけてもらおうというのが、検定の目標のひとつです。顧客を育てれば良いベンチャーも伸びます。
 AIに「冬の時代」からこだわってきた僕は、今でも「変わっている」と指摘されることがあります。でも自分では変わった自己主張をしているつもりはありません。子どもの頃から、できるだけ合理的に物事を解釈しようとする癖がありました。その結果、自分にとっては「最適解」と思われることを、普通にやってきただけなのです。

 

宅配事業に積極投資、コープさっぽろ、AI活用。

 コープさっぽろは宅配事業に積極投資する。8月末に自動倉庫システム「オートストア」を導入。人工知能(AI)を活用して音声で商品を注文できるシステムを構築し、コールセンターの自動応答化も進めるなど18億円の設備投資をして、収益拡大を目指す。一方で、人手不足や働き方改革に対応して、夜間の配達を徐々に減らしていく。
 8月末に稼働するオートストアは、ロボットがピッキング作業をすることで、作業員の負担を減らしながら取扱商品数を現在の約1万2000品目から2万品目に増やす。宅配の注文紙も、買い忘れがないように一度注文した商品に印をつける様式に改良した。
 AIスピーカーに顧客が話しかけて音声で商品を注文できる仕組みを、19年半ば以降に構築する。コールセンターも過去の問い合わせデータをAIで分析し、質問の約8割は自動応答で対応できるとみて、来年にも実用化したい考えだ。
 一方、宅配スタッフの仕事環境に配慮して、夜8時まで受け付けている配達を夕方6時までに前倒しし、夜間の配達を減らす。夜間配達している組合員と相談しながら、札幌市中心街以外は徐々に減らしていく。
 8日に開いたコープさっぽろの総代会では、組合員から「スマホのデジタルカタログから直接注文できるシステムにしてほしい」との要望があった。大見英明理事長は「現在もあるが、使い勝手が悪い。19年にはスタートしたい」と述べた。
 店舗事業では、業務提携しているファミリーマートと複合店舗を出すことを検討する。
 総菜の需要が伸びていることから、札幌市の中心街などに総菜の品ぞろえを充実させた小型の都市型店舗を出店する予定だ。


メルカリ、AIで強く、フリマ市場、世界10倍、山田会長兼CEOインタビュー。

 フリーマーケットアプリで国内最大手のメルカリ(東京・港)の山田進太郎会長兼最高経営責任者(CEO)は日本経済新聞とのインタビューで、「世界のフリマ市場の規模は日本の10倍と想定され、海外展開に力を入れていく」などと語った。19日に東証マザーズ市場に上場した後は、M&A(合併・買収)や提携などで「メルカリ経済圏」を拡大していく戦略だという。
 ――上場で最大630億円の資金を調達します。どう成長につなげていきますか。
 「まずは海外事業への投資だ。立ち上げ段階で赤字の米国事業を成り立たせたい。ネットオークションなら米イーベイの世界の流通総額は、(『ヤフオク』を運営する)日本のヤフー(の売上高)の約10倍だ。フリマアプリも世界には10倍の市場があると考えている」
 「米国事業の黒字化の時期は明言できない。1年ほど前に米フェイスブック(元副社長)のジョン・ラーゲリンが参加し、良いチームができてきた。流通額も増えている。規律を持って投資し、赤字を垂れ流すことはしない。英国にはテスト的に出ている。アジアなど新興国も可能性があるが全くの未定だ」
 ――その他の重点分野はどこですか。
 「スマホ決済『メルペイ』にも投資していく。17年に新会社をつくり、どれぐらいの投資額が必要かなど詳細を詰めている。18年末から19年初めに事業を始めようとしている」
 「(フリマアプリの)『メルカリ』の技術も強化する。人工知能(AI)に力を入れており、例えば出品する不用品の写真を撮るだけでタイトルやカテゴリー、ブランド、推定価格などが自動で出るように機能を拡充している」
 ――事業の多角化M&A・提携戦略について教えてください。
 「モノだけでなくサービスの個人間取引も手掛けていく。すでに自転車シェアの『メルチャリ』やスキル(技能)シェアの『teacha(ティーチャ)』を始めた」
 「ただ、全部自分たちでやろうとは考えていない。メルペイの決済サービスや、メルカリでの売買代金や評価、取引データなどを、プライバシーを守りながら外部の会社も使えるようにし、その上に新しいサービスを構築していく。パートナーを含めたエコシステム(生態系)にはものすごく可能性がある」
 「イメージは(中国のスマホ決済サービスの)『アリペイ』や『ウィーチャットペイ』だ。中国ではこれがあったから、自転車シェアやフードデリバリーなどのサービスが広がった。パートナーを増やすには、M&Aや出資のほか、単純にメルペイサービスを使ってもらうケースもあるだろう。そこは柔軟に考えていく」

 

「AI、軍事利用せず」グーグルが指針、社員の反対運動が後押し。

 米グーグルは7日、人工知能(AI)の開発や適用を巡る「指針」を発表した。AIは社会に便益をもたらすためのものと位置づけ、武器のように人を傷つける分野向けの開発はしない姿勢を明確にした。他のIT企業より一歩進んだ取り組みの背中を押したのは、AIの軍事利用に対する社員の反対運動だった。
 スンダー・ピチャイ最高経営責任者(CEO)が自身のブログを通じて公表した。
 指針は7つあり「社会にとって役に立つ」「バイアス(偏向)を避ける」「プライバシーに配慮する」といった項目が並ぶ。他社にない強いメッセージとして「人を傷つける」分野への適用はしないと明示した。中でも「武器用のAIの開発はしない」としている。
 指針をあえて公表したのはAIの活用の仕方について社内で議論が巻き起こっているからだ。
 複数の米報道によるとグーグルはこのほど、米国防総省と結んでいた軍事用無人飛行機(ドローン)向けのAI開発契約を2019年で打ち切ることを決めたとされる。物体認識ができるAI技術をドローンに生かすはずだったが4千人を超えるグーグル社員が反対の署名運動を起こし、一部社員が辞職する騒ぎにまで発展していた。
 グーグルは指針をつくることで社内の動揺に配慮したもようだ。あるグーグル社員は「自分たちの仕事が人の役にたっていると皆が信じている」と話す。同社は「邪悪になるな」という社是を掲げていただけに軍事や社会監視と見なされる業務への関与に反発を抱く社員も少なくないようだ。
 軍事でなくともAIを不安視する声は社外にもある。画像検索で人種差別的な結果が出たり、AIを使った人の採用や保険審査でバイアスが生じたりするのではという疑念はAI研究者の間でも上がっている。ある英国の研究者は「AIが何を基準に意思決定をしているのかが分からないと危険だ」と話す。
 グーグルの指針はこうした潮流も踏まえて作成したようだ。ピチャイCEOはブログで「AI技術でリードする企業として社会への影響に深い責任を感じている」とした。説明責任に堪えられるAIを開発し、監視目的や非人道的なAI活用はしないと強調した。
 AIへの考え方を巡ってはシリコンバレー企業によって温度差がある。フェイスブックは人の手を借りずにAIを使って偽ニュースを見つける試みを続けている。「僕たちは技術に楽観的でいる」と繰り返すマーク・ザッカーバーグCEOの考え方が底流にありそうだ。
 一方でテスラのイーロン・マスクCEOは「AIは悪魔を召喚する技術」と述べ、規制の必要性を説いている。
 グーグルの動きは、考え方を社内指針に落とし込み、製品づくりに反映させる点で一歩進んだ取り組みだ。通常ならば注目されにくい倫理や規制といった議論が盛り上がっている。未来の技術と思われていたAIが急速に生活に浸透している裏返しだろう。

 


鴻海、中国で巨額調達、スマホ生産会社、上海上場で4600億円、技術導入、習政権も期待(Asia300)

 台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業は8日、中国の上海市場に中核子会社を新規上場させ、271億人民元(約4600億円)を調達した。鴻海は液晶パネル工場などの大型投資構想を打ち出しているが、本業である電子機器の受託製造の稼ぐ力が弱まっており、資本市場から資金をかき集める必要がある。米中のハイテク摩擦が強まる中、有力企業を取り込みたい中国側と思惑が重なり、スピード上場と巨額調達が実現した。
 8日、鴻海の中核子会社「フォックスコン・インダストリアル・インターネット」(FII)の上場式典後の記者会見。陳永正董事長は中国の習近平(シー・ジンピン)政権が掲げる産業政策「中国製造2025」を引き合いに出し、「偉業に積極的に身を投じる」と語気を強めた。上場初日の株価は値幅制限いっぱいの公募価格比44%高まで上昇した。
 同社は米アップルのスマホ「iPhone」の中国生産を担い、鴻海の純利益の約半分を稼ぐ中核企業だ。調達資金は生産ラインへの人工知能(AI)の導入などに充て、自動化で人件費高騰への対応力を高める。ネット大手のアリババ集団や騰訊控股(テンセント)も株主に名を連ねた。
 鴻海は中国との結びつきを一段と強め、支援を引き出す構えだ。鴻海の郭台銘(テリー・ゴウ)董事長は6日、中国・深〓で開いたフォーラムで「AI人材を2万人育成する」とぶち上げた。既に台湾などで関連会社数十社が上場するが、プリント基板を手掛ける臻鼎科技の中国子会社が深〓市場へ上場を予定する。
 日本ではシャープも財務戦略に動員する。5日に最大2千億円の公募増資を実施し、優先株の買い取り原資にすると発表。2016年の買収交渉では原資の一部を鴻海が出すとの観測も出たが、鴻海は負担を避けるとともに、財務が正常化したシャープの社債発行といった独自の資金調達も期待しているようだ。
 鴻海はスマホ需要の失速や中国の人件費上昇などで単純な受託生産モデルは行き詰まり、事業構造の転換に向けた投資構想を相次ぎ打ち出す。中国・広州と米ウィスコンシン州ではそれぞれ1兆円規模の液晶パネル工場の建設計画が進む。郭氏は5月には半導体製造に参入すると表明。実行には少なくとも数千億円の資金が必要となる。
 トランプ米大統領は昨年、鴻海の米国投資はさらに2兆円規模で膨らむと明かした。ほかにもインドでの工場建設など各国で投資構想が浮上。手元資金は17年末に日本円で2兆3千億円強と潤沢に見えるが、同業大手の幹部は「投資構想は手元資金の3倍はかかるのではないか」と話す。
 鴻海は17年12月期に9期ぶりの最終減益となり、事業で稼いだ資金収支を示す営業キャッシュフロー(CF)は393億台湾ドル(約1440億円)のマイナスとなった。スマホの失速や在庫増のほか、取引条件の変更による一時的な要因が影響している可能性もあるが、足元の資金余力の厳しさがうかがえる。
 米国とのハイテク摩擦が激化する中国にとって、鴻海のような海外の有力企業を取り込む必要性はさらに強まる。郭董事長が今後も米中の雇用拡大や産業高度化の思惑をうまく利用しながら、自社の構造転換と成長持続に結びつけていこうとするのは間違いない。

 

アリペイ」1.5兆円調達、IPOの観測、財務体質強化。

 中国アリババ集団グループの金融会社、アント・フィナンシャルは8日、140億ドル(約1兆5000億円)の資金調達をすると発表した。株式の新規発行か債券による調達かなどの具体策は明らかにしていない。同社は電子決済サービス「支付宝(アリペイ)」を展開。近く新規株式公開(IPO)するとの観測が出ており、上場に向けた財務体質強化の一環とみられる。
 資金調達は既存の株主や投資会社などが中心で、人民元と米ドルの両方で計140億ドルの調達を計画している。アントの資金調達は2015、16年に続き3回目となる。アントは調達した資金の使途について、決済システムに関連する研究開発や人材育成に投資するとしている。
 アントのエリック・ジン最高経営責任者(CEO)は「人工知能(AI)や(あらゆるモノがネットにつながる)IoTなどの技術に投資し、次世代の金融プラットフォームを構築していく」としている。アントの企業評価額は1500億ドル規模に達するとの見方も出ている。
 アリババは今年2月にアントに33%を出資すると発表している。アントは以前はアリババの子会社だったが、馬雲会長らが出資する形に切り替えられていた。上場を控えて再びアリババの持ち分法適用会社となっている。
 アリペイのユーザー数は世界で8億人を超えている。インドや韓国、タイなど9カ国地域で決済サービスを展開し、中国国内のユーザー数は5億人を超える。
 中国では11年からサービスの展開を開始した。スマートフォンスマホ)上のQRコードをかざすだけで使用できる利便性が支持され、ここ数年で小規模な飲食店や小売店などでも導入が進み、中国だけでなくアジアでもユーザー数を伸ばしている。