週刊人工知能6月10日から16日

6月10日から16日

農業効率化へデータを活用、政府計画案、AI重点。

 政府のIT(情報技術)分野の重点策をまとめた「世界最先端デジタル国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画」案が分かった。ビッグデータ人工知能(AI)を使い、農業の生産性向上や物流効率の改善につなげる。住所変更など全ての行政手続きをデジタルにする方針も明記する。近く閣議決定する。
 ビッグデータで農業の生産性を高める「スマートフードチェーンシステム」の運用を2019年度に始める。農産物の生産や物流、販売、消費といった情報を農家や企業から集約。トラックの空き状況や小売店の販売実績を基に農家が収穫時期をずらし、鮮度を保った状態で生鮮品を出荷できるようにする。農家の所得向上と食品ロスの削減につなげる。
 先端技術の活用も促す。AIによって港湾の倉庫の空き状況を一覧できるITシステムを20年までに整備する。貨物の搬出入時間を縮め、港湾の渋滞を和らげる狙い。


来店客の視線、AI分析、NEC、マクロミルと提携、目を引く包装などに活用。

 NECは調査会社のマクロミル人工知能(AI)のマーケティング活用で提携する。コンビニエンスストアの棚に設置したカメラで来店客の視線を検知し、AIが画像分析で目に留まりやすい商品を割り出す。食品メーカーなどは包装を工夫し、消費者が手に取りやすい商品作りにつなげることができる。両社は視線検知など先端技術を取り入れた実験店舗を作ることも視野に入れる。
 マクロミルは実際のコンビニ店を模した空間に商品を陳列した棚を置き、モニターとして参加する消費者がどういった商品を手に取るか調査する事業を手掛ける。食品・日用品メーカーが発売前の商品企画の実験に活用している。
 NECは人間の視線を小型カメラで撮影し、AIで分析する技術を持つ。マクロミルの実験店舗の棚にカメラを取り付け、モニターが長い時間見ていた商品を割り出す。メーカー側は注目されやすい商品包装を開発できるようになるほか、コンビニ各社は売れる棚づくりを考案できる。
 NECとマクロミルは視線分析の技術を実用化するため、新たな実験店舗の設置も検討する。一般消費者を招き、試験発売する商品を陳列するなどしてデータを集め、売れ行きを確かめる。コンビニ大手と組むことなどを想定している。
 NECはコンビニで販売する飲み物やおにぎりなどの画像をAIに覚えさせ、レジに置いたカメラで商品を画像認識する技術を持つ。来店客はセルフ決済ができる。すでに自社内にある販売施設で導入している。

 

シャープ、ペット関連事業に参入。

 シャープはあらゆるモノがネットにつながる「IoT」や人工知能(AI)の事業化の一環として、7月にペット関連事業に参入する。まず飼い猫の体調の異変を検知するトイレを発売し、今後も製品やサービスを増やして利用価値を高める。IoTの活用が手薄な分野に新規事業として参入し、育成を急ぐ。

 

AI人材を発掘・育成、コンテストで能力可視化、SIGNATE社長斉藤秀氏(世界デジタルサミット)

 ――コンテスト形式で「懸賞金」をかけて、人工知能(AI)などの技術を駆使してビジネスに使うデータの予測精度を競い合う「SIGNATE」という、ユニークなビジネスを展開しています。
 「日本では唯一のサービスだ。狙いは大きく3つある。まずグーグルのような先端的な大手企業でなくても、AIをビジネスに応用できる。優秀なAI人材を自社で組織化できる企業はそれほど多くない」
 「次にAI人材の育成。AIを学び始めたばかりの初学者であっても実務に基づくデータを使う経験が可能になる。AIやデータサイエンスに必勝法はなく、課題に応じてベストなモデルは異なる。経験が非常に大きな意味を持つ。そして最後に、AI技術者の能力や実力を可視化し、人材を発掘できる。実力がある個人や組織が評価される仕組みだからだ」
 ――現在は9千人が登録していますが、この数は十分ですか。
 「まだまだだ。東京五輪までに10万人くらいの参加者を集めたい。このサービスは、登録者が多ければそれだけ開発できるモデルの精度は向上する。現状では参加者の90%が日本人だ」
 「参加者は社会人や学生、研究者など多岐にわたる。初学者もいれば、企業などで研さんを積んだ経験者もいる。コンテストで勝つのは70%くらいが社会人だ。社会人といっても、課題のドメインに属する参加者が勝つとは限らない。例えば旅行業から出された課題に勝ったのは金融業に属する社会人だった。これは、一定の課題設計をしていれば、対象となるドメインの知識は不要であることを意味している」
 「初学者にとっては、勝てなくても参加するだけで意味がある。実課題を分析する過程はデータサイエンティスト教育に必要な機能だ。こうした課題を大学だけで提供するのは難しい。そこで大学にシステムを提供し、教育に役立ててもらっている」
 ――コンテストにデータを提供する企業からすると、秘密にしたいデータの切り分けが難しいのでは。
 「実際には、ほぼ生のデータに近い。もちろんデータ提供に当たり、当社がコンサルテーションした上で、必要に応じて暗号化を施すなどの工夫はしている。しかし実際には公開して不利益になるデータは企業が懸念するほどでもなく、意外に少ない」
 「むしろ成果が出ると満足してもらえる。現在コンテストは月に3~4件実施している。これまでで25の課題を公開してきた。大体コンテスト1回当たり、200人程度が参加し、4千~5千回程度のトライアルが実施される。多数の参加者が関与することによって、精度の高いモデル開発が担保される」
 ――利用する企業側も、参加者もオープンなマインドが必要ですね。
 「オープンイノベーションという言葉ももう古いので、もっとシェアエコノミー的な観点で捉えたい。ウーバーとかエアビーアンドビーのようなシェアサービスと考えられるからだ。能力のある参加者は余裕のある時間を活用して懸賞金を獲得する。一方で依頼する企業側から見ると、自前で能力の高い技術者を雇用しなくても高精度のモデルを開発できることになる」

 


運転手の異常、AIが警告、サンクレエ、北大とシステム、よそ見・居眠り検知、中小運送向けに。

 システム開発のサンクレエ(札幌市)は、北海道大学と共同で人工知能(AI)を使って運転手の異常を警告するシステムを年内にも開発する。画像や動きのデータからAIが不自然な動きを検知し、重大事故を防ぐ。管理の負担やコストを減らしたい中小の運送会社に売り込む。害獣対策や医療現場への応用も視野に入れる。
 開発には米グーグルが無償公開している深層学習ソフト「テンソルフロー」を使う。深層学習は膨大な情報から特徴的なパターンを自ら発見する機能で、AIの中核となる技術だ。サンクレエは北大の川村秀憲教授らと共同で、細切れにしたドライブレコーダーの映像をAIに学習させた。
 まず試作版として、データを学ばせたAIを組みこんだドライブレコーダーを9月に販売する。トラックの運転手がよそ見運転や居眠りした場合、数分後にタブレット端末などで異常を把握することができる。
 集めたデータを分析し、年内にも異常をリアルタイムで警告できる仕組みを確立する。車の急発進や急ブレーキといった動作の異常も検知できるようにして重大事故を未然に防ぐ。
 運送会社は管理者がドライブレコーダーの映像を確認し、異常がないか確認したり、運転を指導したりしている。システムの導入で管理者が人件費を大幅に削減できる。サンクレエは道内の中小企業が導入できるように開発コストを抑制。利用料金は月額7万~10万円に設定する考えだ。
 農業や医療現場への応用も検討する。エゾシカやアライグマといった害獣の群れをドローン(小型無人機)に搭載したAIが識別し、個体数や生息地域を把握。農家がタブレットで指示を出し、追い払う、わなを起動するといった対応を想定する。医療現場では患者をAIが見守り、異常があればナースコールを鳴らすといった使い方を想定する。
 AIのように技術革新が速い分野では、早く成果を公表したい研究者が論文をインターネット上で無料公開する例が相次ぐ。川村教授は「今後は大手より、固定費が安くすむ中小主導でIT(情報技術)サービスの開発が進む時代になる」とみる。
 

 

札幌でAI人材育成、3社・団体、5コースの講座で。

 札幌市の3社・団体が人工知能(AI)関連の人材育成に乗り出す。AI開発に必要な知識やビジネスに活用する方法など、基礎から応用まで5コースの講座を14日から札幌市内で順次始める。企業経営者やエンジニアの卵など幅広く受講者を募る。
 札幌市の産学官組織「SAPPORO AI LAB」、サツドラホールディングス傘下の「AI TOKYO LAB」、IT(情報技術)分野の人材育成を手がける北海道ソフトウェア技術開発機構が企画・運営する。
 技術習得に関する上級者向け講座では、AIエンジニアとして開発の基礎知識のほか、機械学習や画像認識の演習を通じたAIの活用方法を5日間で学べる。受講料は入門編の2講座が無料。AIエンジニア講座が32万4千円。同講座は経済産業省の補助対象となる予定で、個人受講者は料金の最大7割が助成される。


データセンター3カ所に、日本IBM、18年に首都圏で増設、分散設置、リスク低減。

 日本IBMは首都圏のデータセンターを2018年中に現在の1カ所から3カ所に増強する。停電などで1カ所のデータセンターに障害が起きても、他のデータセンターが補完し、クラウドサービスを維持する。国内のクラウドサービスは米アマゾン・ドット・コムや米マイクロソフト(MS)が先行する。IBMはデータセンターの増強で障害リスクを低減するなど品質を高め、対抗する。
 新設するデータセンターは地理的に分散して設置し、高速ネットワークで相互接続する。具体的な場所はテロやサイバー攻撃から守るため、明らかにしていない。設備投資額も公表していない。
 北海道など気温が低い地域の方がサーバーの冷却や消費電力で優位だが、首都圏の方が顧客の回線つなぎ込み費用が安く、動作が早く、保守管理もしやすいという。どのデータセンターも同じソフトやデータを利用できる環境を整備する。1カ所のデータセンターが障害で停止しても顧客企業はITシステムを継続利用できる。


トロント大、AIで開花、「深層学習」長い雌伏も支えた、グーグルなどに人材輩出。

 カナダのトップ公立校、トロント大学人工知能(AI)研究の人材育成で頭角を現している。地道な基礎研究へのサポートが花形研究者を生み、その教え子たちは様々な業界でAI開発の最前線に立つ。IT大手が相次ぎAI関連の研究拠点をトロントに開設するなど、地域活性化のエンジンにもなった。政府はAI産業育成を国の成長戦略の中核に据えており、同大が担う役割も重みを増しつつある。
 オンタリオ湖に面して広がるトロント市中心街。トロント大のメインキャンパスに隣接する非営利インキュベーション施設「MaRSヘリタージ・ビルディング」の7階に、AI研究の中枢である「ベクター研究所」が入居する。
 緑の広場を見下ろすガラス張りのオフィスには何列も机が並び、様々な企業や大学から研究者が出入りする。
 同研究所はトルドー内閣が2017年、1億2500万カナダドル(約106億円)の予算を投じて打ち出した「汎カナダAI戦略」で設立された3カ所の研究拠点の一つ。政府と地方自治体、グーグルなどの民間企業30社が出資して昨年開設した。
 同研究所を率いるのが「AIのゴッドファーザー」(同大)の異名を持つジェフリー・ヒントン名誉教授とその門下生だ。ヒントン教授はAIが飛躍的な発展を遂げるきっかけとなった「深層学習(ディープラーニング)」と呼ばれる概念を実証し、実用化への道筋を固めた。
 「深層学習」の概念は80年代から存在した。だが、実際に検証が進むには、膨大なデータを処理できる高性能なコンピューターの普及を待つ必要があった。同分野の研究は長年成果を出せず「異端」視されてきたという。それでもこだわり続けたヒントン教授の研究を、約30年にわたりサポートしたのがトロント大だ。
 同大は学部・大学院を含め学生数9万のマンモス校だ。設立50年の歴史を持つ同大コンピューター科学(CS)学部は学部生2000人、博士・修士課程250人を抱える。今やAIの可能性を一変させたヒントン教授の「深層学習」の研究も、同大で無数に進められる基礎研究の一つにすぎなかった。
 日本経済新聞とエルゼビアの共同調査によると、12~16年のAI関連論文の引用回数ランキングで、トロント大はMITやグーグルを抜いて世界6位にランクインした(東京大学は64位)。
 「深層学習」の急速な発展により、「異端」の研究者だったヒントン教授と教え子たちはIT業界の大企業に招かれ、今やAI研究開発の第一線を担う。「トロント大学を『業界地図』に載せた」(研究とイノベーション事業室のゴエル室長)立役者のヒントン教授自身も13年にグーグルに入社。
 変化が速いAI研究の分野で世界最先端を維持するため、同大は現場で企業が直面する課題の取り込みに力を入れる。
 修士課程の「コンピューティング応用」プログラムは、8カ月の大学での研究と、同期間の企業研修を組み合わせたコース。実地で学んだ内容を教授や学生と共有することで、企業の開発動向や現場の課題を学生や教授陣と共有できるメリットがある。10年前の立ち上げ当時に6人だった履修生は、17年に58人に増えた。
 大学のAI研究の躍進は、トロントの街も変えつつある。同市内には過去2年でグーグル、ウーバー、アマゾンなどがAI関連の研究拠点を相次ぎ開設。5月には韓国サムスンもAI研究所を新設し、トロント大のディッキンソン教授が研究を率いると発表した。
 ただ、「米大手企業の人材獲得競争で、カナダの産業育成につながる現地企業やスタートアップにAI人材が回らない懸念がある」(ベクター研究所のリチャード・ゼメル研究部長)。トロント大学では、AI研究を目指す学生の受け入れ拡大に向けた教員の確保や施設整備が喫緊の課題という。


AIの会話認識、5年でヒト並み、米マイクロソフト開発責任者。

 米マイクロソフト人工知能(AI)戦略や研究開発を統括するハリー・シャム上級副社長が来日し取材に応じた。対話型AIの一種である「ボット」が企業経営に不可欠になると述べ、多様なAIが共存する社会が来ると予測した。与えるデータ次第で偏見を持ったAIが生まれるといったリスクにも言及した。
 AIを取り巻く環境について「クラウドによるコンピューター能力の向上、膨大なデータ、機械学習の躍進が重なり、AIの進化が加速している」と指摘。「会話の認識は5年で、画像の認識は10年で人間並みになる」との見通しを示した。
 応用分野として自動運転やロボットに注目が集まるが、「AIの究極の姿はデジタル・インテリジェント・アシスタントだ」と語った。人と対話しながら生活や仕事に必要な作業をこなすAIアシスタントは同社のほか、アマゾン・ドット・コム、グーグルなどが開発や普及に力を注ぐ。
 ただ、シャム氏は「近い将来に1つのシステムが全ての問題に対応するのは難しい。得意な分野ごとに分岐する」とし、仕事に関する用途に強いマイクロソフトと、日常生活の分野が得意なアマゾンが、AI同士の連携を決めたのは自然な流れと説明した。
 企業にとってボットは直接、顧客とつながる手段となり、好みやニーズの把握に欠かせないと同氏はみる。自動車メーカーが車内でドライバーと対話し情報提供するボットをつくったり、小売業者がネット通販用に接客ボットをつくったりすることが考えられる。「マイクロソフトは自社用だけでなく、他社のボットの構築や運用も手がける」と、ここに商機があるとした。
 IT(情報技術)大手がデータを独占してAI開発を進め競争を妨げているのではとの指摘には「企業はそれぞれの業務で発生する独自のデータを持つ。マイクロソフトはそういう知識を整理する手伝いができる」などとかわした。
 欧州連合(EU)が施行した一般データ保護規則(GDPR)については「EUは正しい」としたうえ、「マイクロソフトは2年以上前に技術開発の努力を始めた」と話した。データの所在を追跡したり、暗号化したデータを機械学習に活用したりする技術だという。
 一方、AIには高い信頼性が求められる。マイクロソフトは開発や法務などの代表者が十数人参加する社内委員会を設け、プライバシー保護などの観点から出荷する製品やサービスを審査しているが、なお難題は残る。

 

スクラムベンチャーズ代表宮田拓弥氏――米2社に見たAI革命(WAVE)

 先月、フェイスブックとグーグルという、現在のテクノロジー業界をリードする2社の開発者向けカンファレンスがシリコンバレーで相次いで開催された。いずれのカンファレンスでも発表の中心にあったのは「AI」、すなわち人工知能だ。
 フェイスブックでは、アップした写真に写っている友達の自動タグ付け、外国語の投稿の翻訳など我々が日常的に目にする機能に加えて、AIにより毎日、数百万という規模で作成されるフェイクアカウントの発見、アルカイダイスラム国関連の投稿の削除(99%が事前削除に成功)などが行われているという。
 一方のグーグルではAIを使ったバーチャルアシスタント「グーグルアシスタント」の利用が広がっている。AIスピーカーの「グーグルホーム」だけでなく、テレビ、ヘッドホン、食器洗浄器など5000種類以上のデバイスに採用され、すでに5億台以上が出荷されているという。世界中の人々が、日常的に機械に向かって「OK Google」と話しかける時代がやってきたのだ。
 そして今回、両社から「ついにAIもここまで進化したか」と感心させられる技術が発表された。
 グーグルの新機能「Google Duplex」では簡単な指示をするだけでAIが予約などの電話を代わりにかけてくれる。傘下のディープマインド社が開発した、自然に合成音声を生成する技術「Wavenet」をベースにしており、詳細な会話データを用意することなくAIが自動で音声を合成し、巧みに会話を組み立てる。
 デモでは散髪やレストランの予約などを非常に自然な声で時間、メニュー、人数の指定などのかなり複雑なやりとりを正確にかつ巧みにこなしていた。もちろん応対している側の店員は自分がAIとしゃべっていたとは気づいていない。
 フェイスブックは新しいVR(仮想現実)ヘッドセット「オキュラス Go」を発表した。VRの感覚をよりリアルにするために、バーチャルな映像をAIでリアルにする取り組みを公開した。デモでは実際の家の中の映像とAIで再構築したバーチャル映像が比較され、角度まで考慮して鏡の中の写り込みまで正確に再現していた。最後に答えを聞くまでは全く見分けが付かなかった。
 グーグルがそれまでの「モバイルファースト」から「AIファースト」を宣言してからわずか2年。AIは急速に我々の生活に浸透しつつあり、かつ信じられないスピードで進化をしている。
 AIの進化の一つのネックとなっていたのが「教師データ」だ。AIに正解を教えるためのデータの数のことだ。これも今回、フェイスブックのユーザーがインスタグラムにアップする画像とそのハッシュタグから自動で教師データを作り上げる仕組みを発表した。この仕組みにより一気に35億枚のハッシュタグ付きの画像が教師データに活用できるようになり、ユーザーがインスタグラムを使えば使うほどAIが進化するループ(循環)が完成した。
 2045年に来ると言われている「シンギュラリティー」、いわゆるAIが人間の知性を超えるタイミングの足音が聞こえ始めている。
 日本と米国でスタートアップを複数起業後、ミクシィアメリカの最高経営責任者(CEO)を経て、2013年にスクラムベンチャーズを創業。50社超の米国のスタートアップに投資。

 


AI使う健康事業募集、大阪府

 大阪府はヘルスケアに人工知能(AI)などを組み合わせた新たなビジネスの創出を支援する。スタートアップ企業や個人からビジネスプランを募り、健康ビジネスの専門知識を持つ中小企業診断士らがプランの内容向上に協力する。半年かけて優秀な10件を選抜し、その後3カ月で集中的に事業化を支援する。
 「健康寿命延伸産業アクセラレータープログラム」として19日に大阪イノベーションハブでキックオフ・セミナーを開く。AIやあらゆるモノがネットにつながる「IoT」技術を生かす分野のほか、健康経営支援、保険外介護予防の3つの分野別にビジネスプランを募集する。大阪でビジネス展開の予定があれば、本社所在地は問わない。
 応募した企業や個人は7~9月に専門家による3回の講習を受け、個別に協力を得ながらビジネスプランを磨く。府は書類と面談による審査で支援先を10件に絞り込む。12月にはプレゼンテーションによるコンテストも開く。
 選抜後の具体的な支援について大阪府は「効果の科学的な裏付けを得るために大学や研究機関を仲介するなど、ヘルスケア産業に特化した支援を準備している。まず60件以上のプラン応募を目標にする」(産業創造課)という。


毎秒20京回、最速スパコン、米国立研、中国から首位奪還視野。

 米オークリッジ国立研究所は世界最速のスーパーコンピューター「サミット」を開発した。計算速度は理論上、毎秒20京回(京は1兆の1万倍)で、これまで最速の中国の「神威太湖之光」を抜いて首位を奪還できるとしている。米国のスパコンが首位に立てば2012年の「タイタン」以来。
 サミットの開発について、米エネルギー省のペリー長官は「科学、経済の発展や国家安全保障に資する」と話した。世界各国は毎秒100京回の計算ができる「エクサ級」のスパコンの開発でしのぎを削っており、同研究所は「これを弾みに21年までに完成させたい」としている。
 米国はサミットを、天文研究や新素材の開発に役立てるほか、人工知能(AI)へ応用して病気の治療法確立にもつなげたいとしている。
 17年11月に発表されたスパコンの世界ランキング最新版では、中国が1、2位を独占。中国はこれら二つのスパコンで13年から首位を守ってきた。
 日本は実際の計算速度で「暁光」が4位に食い込んだ。暁光を開発したペジーコンピューティング(東京・千代田)の前社長らは国の助成金をだまし取った詐欺罪などに問われて公判中の状況だ。


シンギュラリティ大学上級フェロー、ジョナサン・ノウルズ氏――技術の飛躍に心構えを(世界デジタルサミット)
失敗に学び リスク恐れず
 ――シンギュラリティ時代には「指数関数的な心構え」を持つことが大切と提唱しています。指数関数的な心構えとは。
 「技術が飛躍的に進展することを理解し、行動しようとする姿勢のことだ。30歩歩くことを想像してほしい。仮に1歩ごとに進める距離が指数関数で伸びるとしたら、30歩で地球を26周できる。とりわけ重要なのは最後の1歩で地球を13周できることだ」
 「この例えと同じくらい、技術は飛躍的に進展する。宇宙技術や3次元プリンターなどの技術を組み合わせ、3次元プリンターで巨大な無線LANの基地局を宇宙に作り出し、地球全体がインターネットにつながる空間にするような時代も訪れるだろう」
 「この飛躍的な進展を前提にすれば、人や組織には早いうちにリスクを取り、失敗を大切にする姿勢が求められる。もちろん、心構えを持てない組織もある。象徴的な例は米イーストマン・コダックだ。1975年にデジタルカメラの技術を生み出したが、ビジネスにならないと判断してしまった。当時ではデジカメの技術は早すぎたかもしれないが、指数関数的な心構えがあればやってみようと思えただろう」
 ――最近の技術進歩を支えた、18カ月で半導体の集積効率が倍増するという「ムーアの法則」は限界に近いと言われます。指数関数的な技術の進展は続くでしょうか。
 「全く心配ない。ある技術が限界と言われるころには別の技術がいくつも登場している。現状では取るに足らない技術も指数関数的に進化する。例えば航空技術はわずか数十年で発達した。逆に急激な進化が続くことを恐れる必要もない。人工知能(AI)が進化し、感性の領域にも応用が進みつつあることに警鐘を鳴らす人がいる。確かにリスクはあるが積極的にとらえるべきだ。間違ったとしても課題に気づける」
 「人間という生物は心配性だからこそ25万年前から生き延びてきた。否定的なバイアスにかかりやすいのは仕方ないが、歴史を見れば指数関数的な技術の進化によって世界は着実によくなっていることも確かだ」
 ――シンギュラリティ大学では何を教えているのですか。
 「指数関数的な心構えを持ち、世界をよりよく変えたいと考える人たちに、様々な技術の最前線で何が起こっているのかを伝えている。米航空宇宙局(NASA)のシリコンバレーセンター内にあるキャンパスで、量子コンピューター、ブロックチェーン、デジタル生物学などを7日間、集中的に学んでもらう。受講者は本気で世界を変えようとしている人ばかり。修了者には医薬品をドローンで届けるプログラムをアフリカで取り組む人たちもいる」
 ――指数関数的な発達が続く今後、日本のビジネスパーソンや企業には何が求められますか。
 「日本にはものづくりの現場などで数多くの革新をもたらしてきた歴史がある。ソニーのaiboが象徴するように、今後さらなる発展が見込めるAIやロボティクスの分野でも世界をリードする立場になれる。革新を生み出すため、米国や世界各国の人、組織と互いに学び合い、アイデアを結合させる取り組みを推進してほしい」

 

オムロン、世界の技術営業拠点2倍に。

 オムロン大阪市で事業戦略説明会を開いた。2020年度に売上高を1兆円に拡大する計画で、工場自動化に使う制御機器とヘルスケア事業を2本柱に据えることを強調した。制御機器関連では18年度に顧客に機器を直接案内する技術営業拠点を前年度比約2倍の世界35拠点に拡大するほか、7月には人工知能(AI)を使って工場の設備の異常を監視するサービスも始める。
 ヘルスケア関連ではウエアラブル血圧計端末を使って、睡眠のデータを計測する。その上でデータを蓄積、解析し突発的な疾患を予防するサービスも米国で始める。


東芝三井物産が提携、デジタル化、提案型ビジネス拡充。

 東芝は13日、企業のデジタル化に対応した提案型ビジネスで三井物産と提携すると発表した。東芝の孫会社、東芝デジタル&コンサルティング川崎市)に三井物産が20%出資する。出資額は数億円程度とみられる。あらゆるモノがネットにつながる「IoT」や人工知能(AI)を既存事業に組み合わせることで提案型ビジネスを拡充する。
 10月1日付で出資手続きを完了する予定。東芝デジタル&コンサルティングへの出資比率は東芝が30%、デジタル事業会社の東芝デジタルソリューションズが50%、三井物産が20%になる。
 発電や物流システムなど社会インフラ事業にビッグデータ解析などを盛り込むことで、顧客の課題を解決するビジネスモデルを目指す。東芝は4月1日付で「デジタルトランスフォーメーション戦略統括部」を新設。デジタル化を中心とした顧客企業のビジネス変革を支援する事業を策定中の新中期経営計画の柱に据える。三井物産も中期計画の中でデジタル技術を活用した新たな価値の創造を掲げており、両社で事業拡大を加速する。

 

欧州IT見本市「CeBIT」開幕、AI・ロボ、人と協働――IBM、カールスルーエ工科大。

IBM 宇宙の実験手伝い
カールスルーエ工科大 声を認識 作業補助
 欧州最大級のIT見本市「CeBIT」がドイツ・ハノーバーで開幕した。フォルクスワーゲン(VW)やSAPなどドイツ企業を中心に、人工知能(AI)やクラウドなど最新のデジタル技術を披露した。
 「この板を外したいんだけど」「オテツダイシマス」。作業員の声と姿を認識し、緑色の双腕ロボットが動き始めた。板を支える場所や手が何本必要かをAIで判断し、作業を手助けする。
 独カールスルーエ工科大学(KIT)が披露したAIを搭載したロボット「ARMAR―6」のデモだ。カメラとセンサーが周囲の状況や人の声を把握し、経験を通じて新たな仕事を覚えていく。タミン・アスフォー教授は「事前のプログラムは最小限でいい」と話す。
 米IBMは国際宇宙ステーション(ISS)で利用される予定の球形ロボ「サイモン」を展示した。同社のAI「ワトソン」を搭載し、宇宙飛行士の宇宙での実験の手伝いをする。重さは5キロで無重力空間で自由に姿勢を制御し、呼べば近くに来て実験の手順や記録をしてくれる。
 映画「2001年宇宙の旅」に登場する「HAL」のようなAIの暴走を防ぐため、背面には手動で電源をオフにするボタンを備える。
 自動車関連の展示も目立った。VWは完全自動運転車のサーファー向け派生モデルや量子コンピューターを使った取り組みを紹介。スタートアップのe.GOモバイルは小型の電気バスを出展。クラウドにつながり、交通状況や利用者の要望に応じて運行する。
 SAPは会場に高さ64メートルの観覧車を持ち込んだ。同社のソフトを使ってテーマパークの運営を最適化するという設定だ。来場者は観覧車に乗りながら同社のAIやクラウドについて説明を受けることができる。
 CeBITはこれまで3月だった開催を6月に移し、伝統的な法人向けITイベントから、スタートアップを含めたデジタル交流イベントに衣替えした。DJイベントを開いたり、野外スペースに休憩できる場所を多く設けたりするなど若い世代の来場増加を狙う。米ラスベガスの家電見本市「CES」や、欧州で注目度が高まるポルトガルリスボンの「ウェブサミット」を意識しているようだ。
 一方で、記者会見の多くがドイツ語のみで実施されるなど、海外の報道陣から不満が上がった。企業側が出展する展示会を選別する動きは広がっており、新しい立ち位置の模索が続きそうだ。
 日本企業にとってもCeBITとの距離感は難しくなった。17年は日本がパートナー国で安倍晋三首相が出席し、117の日本企業・団体が大挙したが、今回は29の企業・団体にとどまった。日本貿易振興機構ジェトロ)が企画した中堅・中小企業中心のパビリオンを除けば、ソニーセミコンダクタソリューションズや東京都など7社・団体だけだった。

 


上海で見本市CESアジア、アリババ・百度・ホンダ…、AI・自動運転をPR。

 中国の家電IT(情報技術)見本市「コンシューマー・エレトロニクス・ショー(CES)アジア」が13日、上海市で始まった=写真。開催は4回目で、出展企業は3年で2倍の500社に増えた。人工知能(AI)や自動運転、仮想現実(VR)など、先端テクノロジー分野の大手からスタートアップ企業まで幅広い企業が顔をそろえた。
 中国電機大手、海信集団(ハイセンス)の周厚健董事長は講演で「中国のハイテク産業は猪突(ちょとつ)猛進の勢いで成長している」と話した。「CESアジア」は13カ国・地域から企業が出展し、7割を中国企業が占めている。開催期間に4万人が訪れる見通し。新しいテーマと位置づけたのがAIで、アリババ集団や検索大手の百度が技術をアピールした。
 米国のCESと同じく、自動運転やあらゆるものがネットにつながる「IoT」も来場者の関心が高い。自動車技術を紹介するブースでは中国の電気自動車最大手、比亜迪(BYD)や韓国の現代自動車が参加した。日本からはホンダと三菱電機が自動運転の関連技術を出展している。

 


外国人材、KYOTOへ、LINEのAI拠点、800人応募(NEWSFOCUS)


 LINEは13日、人工知能(AI)を中心とする新しい開発拠点「LINE KYOTO」を京都市に開いた。技術者の募集に1000人が応じ、800人は外国人だったという。AI分野の人材獲得競争が世界的に激しくなるなか、「KYOTO」ブランドが効果を発揮した。
 「日本語が公用語なのに英語しか通じない」。和装で登場した出沢剛社長は同市内でこう冗談めかした。
 LINEのソフトウエア開発拠点は東京都、福岡市に続いて3カ所目。「ユニークな街に住みたい」と、福岡では半数を外国人が占めている。伝統文化や寺社が多い京都にも設けると2017年9月に発表していた。
 まずビルの2フロアで18人体制で稼働した。外国人は12人で、5人は東京と福岡からの転勤。新たに採用した7人の出身国・地域はフランス、メキシコ、中国、香港、台湾。「月に7500万人の利用者がいるサービスの開発に携わりたい」と、業務用を開発していた人が来日した例もあるという。福岡から移ったドイツ出身の男性(34)は「街から様々なインスピレーションを受ける」と話していた。
 LINEは18年中にAIスピーカーの技術仕様を公開し、企業が自由にサービスを開発できるようにする計画。京都にはインターネット系の研究開発拠点が少ないこともあり、京都大学などの大学出身者と合わせて3年後にも100人体制を目指している。今夏には月40万円の報酬で学生を受け入れるインターンシップ(就業体験)も開く。
 「オフィスとしてふさわしい場所」。13日にはトヨタ自動車がAI開発の新会社のオフィスを東京・日本橋に置き、国内外から即戦力となる技術者の募集を始めたと発表した。限られた技術者を日本に呼び込むには立地戦略も重要かもしれない。

 

開発人材集う2800万人、マイクロソフト、ギットハブ買収、開放型で技術革新狙う。

 ソフトウエアのもととなるソースコードを技術者が共有できるサイトを運営する米ギットハブが13日までの2日間、日本で技術者向けイベントを開いた。同サイトは全世界で2800万人ものIT(情報技術)開発者が集まるほど力を持つ。同社を巡っては米マイクロソフト(MS)が巨額買収すると発表した。MSは技術者が自由に行き交う場を取り込み、人工知能(AI)などに関わる複雑なソフト開発競争を勝ち抜く考え。
 「技術者が楽しんでソフトウエア開発をできる環境をつくるのが役割だ」。ギットハブのジェイソン・ワーナー技術担当上級副社長は日本経済新聞の取材にこう語った。
 2008年設立のギットハブが運営するサイトには、複数の技術者が手掛けたソースコードが無償で公開されている。誰でも自由に参照、改良でき、ソフトウエアを共同開発する場として全世界で利用されている。
 企業がサイト内にソースコードを保存する場合などに代金が必要。こうした一部有料サービスが同社の収益となっており、損益は黒字で推移しているとみられる。
 ソースコードの更新履歴や、誰が作業したのかも分かり、オープンな開発プラットフォーム(基盤)として多くのプログラマーを引き寄せている。国内利用者はこの3年間で3・5倍増えており12、13日のイベントには800人が参加した。
 履歴書の代わりにギットハブのIDを申告――。フリーマーケットアプリ大手のメルカリ(東京・港)は、技術者の採用にギットハブを使う。過去にギットハブ上で作成したソースコードが評価されれば、通常の選考過程で課される技術課題が免除される。採用担当者は「技術者としての実績が一目で分かる」と明かす。
 ヤフーはソースコードの管理や活用だけでなく、ギットハブを窓口に社外と社内の技術者の接点を増やすことで自社開発力の強化を図っている。ワーナー副社長は「人工知能(AI)や(あらゆるモノがネットにつながる)IoTの領域ではソフト開発が複雑化している」と指摘。自動車のソフトのソースコードの行数は1億行に達するという調査もあるが、ギットハブを使えば「開発工程を単純化できる」(同副社長)という。
 ギットハブは開発者同士が情報をやりとりする交流サイト(SNS)の機能も果たしている。この結果、開発者の強みや能力などの人材データが集まりやすい。
 MSは約75億ドル(約8200億円)を投じた買収による直接的な収益拡大効果について明言していない。だが、外部の技術を取り込んだ「オープンソース」の場に人材が集まることでMSのサービスやソフトの価値を高められるとみている。
 近年MSはソフトウエア開発でオープンソースを強力に推進。「MSはギットハブの中で最も多く活動している企業」(同社のワーナー副社長)とも言われる。
 実際、プログラミング用編集ソフトなどはソースコードを次々と公開し、外部の開発者と改良を繰り返している。MSの基本ソフト(OS)などもオープンソース化が進むとみる関係者もいる。
 もっとも、ソフトウエア開発に必要なクラウドなど自社サービスでギットハブに集まる技術者を囲い込めば、自由でオープンな開発の楽園が侵されることになる。同社をMS色に染めず中立性を保ちながら、投資回収をどう進めるのか。その答えを市場は待っている。

 


AI開発、サムスン急発進、脱・メモリー依存急ぐ、半導体を高速化、創薬にも活用(Asia300)

 韓国サムスン電子人工知能(AI)の研究開発を一気に本格化する。推進役となる幹部ポストと海外3カ国の開発拠点を新設し、2020年までに技術者1千人体制とする。AI向けに情報を高速処理する半導体や、新薬の開発につなげ、半導体モリーに続く新たな経営の柱を育てる。事実上のトップ、李在鎔(イ・ジェヨン)副会長が主導し、出遅れが指摘されるAIで巻き返しを狙う。
 サムスン関係者によると、AIなどの新分野や新事業の推進役となる最高イノベーション責任者(CIO)職が5月に設けられ、米国人のデービット・ウン氏が就いた。ウン氏は米グーグルでAIなど先端技術を担当し約6年前サムスンに入社。スタートアップとの連携や投資を手がけてきた。
 CIOの役割についてサムスン幹部は「AIや第4次産業革命などをテーマに将来の新事業育成にあたる」と説明する。CIOの新設は対外的には公表していない。
 同社は5月下旬に、英国、カナダ、ロシアにAI研究センターを相次いで開設。本国の韓国と米国を合わせた5カ国で研究開発を進める体制に改めた。英国はデータ解析、カナダは音声認識、ロシアは物理学との連携といった具合に各国の強みを研究にいかす。足元の技術者数は明かしていないが、2年後に韓国で600人、海外で計400人の人員を計画する。
 併せてAI研究の世界的権威とされる米プリンストン大学のセバスチャン・スン教授と、米ペンシルベニア大学のダニエル・リー教授を招いた。両教授はこれまでのポストを離れ、サムスンに所属するという。
 AIを巡ってはトヨタ自動車が3月に自動運転技術を開発する会社の設立を発表しており、1千人規模とする方針。米国の開発拠点トップには著名研究者を招いた。サムスンはAI技術者が数千人規模とみられる米IT(情報技術)大手に及ばないが、世界大手メーカー並みの体制を整える。
 同社は日本企業の人材を厚待遇で取り込み、液晶パネルや半導体の技術力とシェアを急速に高めた。17年12月期の連結営業利益は53兆ウォン(約5兆3千億円)。資金力を生かし、優秀な人材を囲い込む光景がAIでも再現される可能性がある。
 サムスンはAIの研究開発を進めることで、AIの基幹技術である深層学習など向けに、データの処理速度を3~4倍に高める「AI半導体」を開発する。画像などのビッグデータを高速処理できるAI半導体は、高速通信規格「5G」の実用化やそれに伴う技術革新の中核を担うとされる。
 17年に米インテルから半導体首位の座を奪ったサムスンは、DRAMなどのメモリー半導体部門の主力。最近はメモリーとは別に半導体の受託生産にも力を入れる。近年は米アップルをはじめ自社製品やサービスに最適な半導体を独自に設計する企業が増加。サムスンはAIをテコにこうした企業からの受託生産事業を拡大し、同事業で世界首位の台湾積体電路製造(TSMC)を追う。
 自動運転関連の自動車部品やバイオ医薬の創薬でもAIの活用を探る。サムスンは新たな収益の柱に自動車部品とバイオを掲げているが、足元では成長鈍化懸念が強まっており、AIによりテコ入れをめざす。
 サムスンは足元の連結営業利益に占める半導体部門の比率が7割を超え、このうち9割がメモリーとされる。稼ぎ頭のDRAMについては、中国政府が独占禁止法違反の疑いで同社などを調査しており、関係者によると「5月31日に立ち入り調査を受けた」という。
 DRAM市況の先行きにも不透明感が漂い、メモリーに依存する経営からの脱却は時間との戦いに突入しつつある。
李副会長が主導
人材確保、後発組に難題
 韓国サムスン電子は、人工知能(AI)の分野では後発だ。2018年3月に発売した高級スマートフォンスマホ)「ギャラクシーS9」に独自のAIを搭載しているが、音声認識の精度はいまひとつ。米グーグルなどとは、技術力に差がある。
 ここにきてAI研究センターの開設や技術者のスカウトを矢継ぎ早に進める裏には李在鎔(イ・ジェヨン)副会長の指示がある。李氏は韓国の前大統領とその友人の国政介入事件への関与を問われ、17年2月から約1年間、拘束された。現在も上告審を控え、経営の表舞台に出ないようにしている節がある。一方で釈放から間もない3月以降、欧米やアジアを歴訪。6月も日本や香港に出張したとされる。
 目的は先端技術に詳しい経営者や有識者との交流だ。李氏はAIと次世代高速通信規格「5G」に対する関心が高く、積極的に情報収集している。
 AI分野での課題は人材確保だ。IT大手に加え、トヨタ自動車などのメーカーも開発体制の強化に動き、AIは人材獲得競争の最も激しい分野となった。後発のハンディを乗り越え、目的に合った優秀な人材を確保できるかがまず試される。
 

過疎地で自動運転バス、IT戦略閣議決定

 政府は6月15日、IT(情報技術)分野の重点策をまとめた「世界最先端デジタル国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画」を閣議決定した。自動運転の実証実験を進め、2020年度までに交通の便が悪い過疎地で無人の自動運転バスの運行開始を目指す。交通事故が頻繁に起きる場所などのデータを公開し、自動運転の技術向上につなげる。
 ビッグデータで農業の生産性を高めるシステムの運用を19年度から始める。トラックの空き状況や小売店の販売実績といったデータをもとに農家が収穫時期をずらし新鮮な商品を出荷できるようにする。人工知能(AI)を使って港湾での物流を効率的にし、搬出入の渋滞を和らげる新システムを20年までに整備する。
 住所変更や法人設立など行政手続きは「100%デジタル化」を目指す。書類提出や窓口での本人確認を省き、オンラインで手続きが済むようにする。行政手続きの電子化を進める「デジタルファースト法案」を早期に国会に提出する方針も明記した。


勤務シフト、自動作成、吉野家高島屋、時間半減。

 外食、小売り大手が勤務シフトづくりを自動化している。吉野家ホールディングス(HD)はセコムなどと人工知能(AI)を使う管理ソフトウエアを開発、秋から導入する。店長がシフト調整にかける時間を半減させる。リーダー役の負担を減らし、従業員の指導などに力を割く。
 外食、小売り企業は短時間勤務のシフトを増やしている。育児や介護の合間に働きたい社員の要望をすくいあげたり、アルバイトを採用しやすくしたりするため。店長らリーダーのシフトづくりの負担は増している。
 シフトづくりを自動化できれば、リーダーは浮いた時間でアルバイトの教育を充実させたり、接客サービスの改善策を練ったりできる。
 牛丼店「吉野家」では、半月のシフト決定に10日間の断続的な作業が続く。出勤したスタッフによるシフト表への書き込みを待ち、他店に応援を求める。吉野家HDはセコムやAIスタートアップ企業のエクサウィザーズ(東京・港)とシフトの自動作成ソフトを開発。店長のシフト作成時間を半減したいという。
 従業員の出勤の実績や休日の希望を入力し、AIに一定のシフトを作らせる。応援要員の候補も選ぶ。埼玉県の81店舗で採用し、全国に広げる。
 高島屋は9月、スタッフが勤務時間帯の希望を端末に入力するとシフトができるアプリを一部店舗で採用する。従来は勤務希望の時間帯を紙に記入して調整していた。8時間程度かかったが、半分になると見込む。
 ビックカメラは2月までに全店で、勤務希望の入力をもとにする自動作成システムを入れた。従来は1フロアに必要な人数を割り出し、経験と勘で作っていた。ある店舗ではフロア責任者が1カ月の1フロアのシフトを2時間半かけて作っていたが、新システムでは15分間の微修正で済んだ。
 日本のサービス産業は生産性の向上が課題で、IT(情報技術)の活用が欠かせない。日本生産性本部によると、サービス関連分野の16年の就業1時間当たり付加価値額(売上高から原材料費などを除いた金額)は製造業に比べて大幅に低くなっている。